タイの自動車市場で、長らく「国民車」とも言える存在だったピックアップトラックの販売が、24年ぶりの低水準に落ち込む見通しとなった。民間調査機関ttbアナリティクスは、2026年の販売台数を約17万1,000台、前年から7%減と予測する。家計債務の重さによるローン審査の厳格化、ディーゼル車に不利な新税制、そして中国製EVの攻勢という三つの逆風が、タイ車産業の屋台骨を直撃している。トヨタやいすゞなど、この分野を支えてきた日本メーカーにとっても打撃は大きい。
24年ぶりの落ち込み、「主力」が崩れる
ピックアップは、農業や商売の足として、そして日常の乗用車として、タイの隅々で使われてきた。トヨタ「ハイラックス」やいすゞ「D-MAX」が長年トップを争い、タイは世界有数のピックアップ生産国でもある。その「看板商品」の販売が、24年ぶりの低さまで落ち込もうとしている。
最大の壁は、消費者がローンを組めないことだ。タイの家計債務はGDP比で約89%に達し、金融機関は自動車ローン、とりわけ高額になりがちなピックアップの審査を厳しくしている。買いたくても与信が下りない人が増え、販売の現場を冷やしている。
ディーゼルに重い新税と、中国EVの攻勢
2026年からは、自動車税制が二酸化炭素(CO2)の排出量に応じて課税する方式に切り替わった。ディーゼルエンジンが主力のピックアップやPPV(ピックアップ派生の多目的車)は、この新税制で不利になり、価格や購買意欲に影を落としている。
さらに、BYDやMG、NETAといった中国勢が、低価格を武器にEVでタイ市場へなだれ込んでいる。2026年1月には中国系メーカーの販売が前年同月比で2倍以上に伸び、市場シェアの半分近くを占めた。安い輸入EVが、これまで日本車が押さえてきた需要を切り崩している。
サプライチェーンへの波及と、ゆるやかな回復
ピックアップの不振は、車を組み立てる工場だけの問題ではない。部品メーカーや販売店など、すそ野の広いサプライチェーン全体に影響が及ぶ。タイ経済にとって自動車は最大級の産業であり、その中核が揺らぐことの意味は小さくない。
一方で、生産全体には持ち直しの動きもある。2026年2月の自動車生産は前年同月比で増え、年明けからの2か月は輸出向けを中心に前年を上回った。業界では、2025年に底を打ち、2026年以降はゆるやかに回復していくとの見方もある。とはいえ、国内のピックアップ需要がいつ戻るのか、その道のりはなお険しい。





