タイのシンガビール創業家ビロムバクディ家(Bhirombhakdi / บุญรอด)の後継者でタイの環境活動家、シラヌド・「Psi」・スコット氏(Siranudh "Psi" Scott)が2026年5月25日、タイランド・ウォッチ財団(Thailand Watch Foundation)とともに記者会見を開き、9歳から15歳までの期間に兄のスニット・「Pi」・スコット氏(Sunit "Pi" Scott)から性的暴行を受け、加えて薬物を強制的に使用させられたと告発した。これは前日に発表した性的暴行告発の続報で、薬物強制使用の追加告発を弁護士相談を経て公表した形となる。Psi氏は同時に姓を「Scott」から「Samut(サムット)」に変更する手続きを公表し、家族との完全な訣別を宣言。母親は祖父から相続した財産を巡って法的措置を取っているとされ、他の家族は支援を拒否しているという。6月10日に法廷出廷が予定されており、シンガビール創業家を巡る大型スキャンダルとしてタイ国内外で大きな注目を集めている。
シラヌド・「Psi」・スコット氏、ビロムバクディ家の環境活動家
被告発者の弟、シラヌド・「Psi」・スコット氏は、タイのシンガビール(SINGHA Beer / สิงห์)を製造販売するボーンロード・ブリュワリー(บริษัท บุญรอดบริวเวอรี่ จำกัด / Boon Rawd Brewery Company Limited)を所有するビロムバクディ家のメンバー。タイの環境活動家として知られ、社会問題への発信を続けてきた人物。
9-15歳の性的暴行+薬物強制使用、兄スニット氏を告発
5月25日の記者会見で、Psi氏が明らかにした告発内容は以下の通り。
- 加害者: 兄スニット・「Pi」・スコット氏(Sunit "Pi" Scott)
- 期間: Psi氏が9歳から15歳までの6年間
- 被害内容: 性的暴行(セクシュアル・アサルト)
- 追加告発: 同期間中に薬物の強制使用
薬物強制使用の追加告発は、弁護士との相談を経て公表した内容。性的暴行と薬物使用の同時被害は、心理的トラウマと法的責任の両面で重大な問題となる。Psi氏は記者会見でこれら被害が長期間にわたって続いたことの精神的影響を語った。
姓を「Scott」から「Samut」に変更、家族との訣別
Psi氏は5月25日、家族との完全な訣別を象徴する措置として、姓を「Scott(スコット)」から「Samut(サムット / タイ語で「海」を意味する)」に変更する手続きを公表した。
Psi氏が姓変更の理由を以下のように説明した。
- ビロムバクディ(Bhirombhakdi)の姓は元々使ったことがない
- 父親の姓「Scott」を拒否する理由は「父親が私の苦悩を支援してくれなかった」から
- 「Samut」は新たな出発の象徴として選んだ
タイでは姓変更は法的手続で可能だが、有名家系の後継者が家名を捨てるのは非常に異例な事案として注目される。
母親は財産相続を巡る法的措置、他家族は支援拒否
Psi氏の告発の中で特に注目される家族関係の側面が以下。
- 母親: 祖父から相続した財産を巡って、Psi氏を相手取った法的措置を取っている
- 他の家族メンバー: Psi氏への支援を拒否
- Psi氏は実質的に家族から孤立した状態
この構図は、有名家系内での財産・遺産・権力を巡る複雑な対立を示唆する。性的暴行告発と財産訴訟が並行で進行する珍しいケース。
ボーンロード・ブリュワリー、タイ最大手ビール会社
ビロムバクディ家が所有するボーンロード・ブリュワリー(Boon Rawd Brewery)は、タイのビール業界トップシェアを誇る大手企業。主力ブランドの「シンガビール(SINGHA Beer)」は世界50カ国以上で販売されている。
- 設立: 1933年
- 創業者: プラヤ・ビロムバクディ(Phraya Bhirombhakdi)
- 主要ブランド: SINGHA Beer、Leo Beer、B-ing、Boon Rawd Trading
- 売上: 年間数千億バーツ規模
- 従業員: 約1万人
タイ財閥の代表格の一つで、メディア・SNSへの広告、スポーツ後援(プレミアリーグ・チェルシーFCなど)で広く知られる。同社の創業家の後継者間で起きている本スキャンダルは、ブランドイメージへの影響も懸念される事案。
タイランド・ウォッチ財団、Psi氏の支援団体
Psi氏の記者会見を支援したのは、タイランド・ウォッチ財団(Thailand Watch Foundation)。タイの社会監視・人権擁護・性的暴行被害者支援を行う団体で、Psi氏の告発活動を法的・社会的に支える役割を担う。Psi氏が直接単独で記者会見を行うのではなく、第三者団体と一緒に発表することで、メッセージの公信力と保護を強化する戦略とみられる。
6/10法廷出廷、刑事訴追の可能性
Psi氏は2026年6月10日にタイの法廷に出廷する予定とされている。出廷の具体的な目的は、本記事執筆時点では正式発表されていないが、以下の可能性が想定される。
- 母親との財産訴訟関連
- 兄スニット氏への性的暴行刑事告訴
- 名誉毀損関連訴訟
- 姓変更手続きの法的確認
タイの性犯罪法は近年強化されており、未成年への性的暴行は時効が長く設定されている。Psi氏の証言と弁護士団の戦略次第で、兄スニット氏への刑事訴追が現実的な選択肢になる可能性がある。
ビロムバクディ家、家族の正式な反論なし
5月25日のPsi氏記者会見に対するビロムバクディ家からの公式な反論・コメントは、本記事執筆時点で確認されていない。タイ財閥の伝統的な対応では、家族問題は内部で解決し、公的な反論を控える傾向が強い。一方、本事案のように公開的に告発された場合、ブランド企業としての対応(株主・顧客・社員への説明)が求められる場面となる。
SNSと国内外メディア、タイ財閥スキャンダルへの関心
本告発はタイ国内のSNS(Twitter/X、Facebook、TikTok)で急速に拡散している。タイ財閥の家族問題は、これまで秘匿される傾向にあったが、Z世代・ミレニアル世代の家族メンバーが社会発信する時代となり、家族内のトラブルが公的議論の場に出てくるパターンが増加している。
国際メディアでも、東南アジアの財閥スキャンダルとして注目されており、Bloomberg、Reuters、AFPなどが追跡している可能性がある。タイの社会変化と家族構造の変化を象徴する事案として、長期的に議論が継続する見込み。


