バンコクのエアポートレールリンク・マッカサン駅近くで5月16日に発生した貨物列車対公共バス衝突事故(死者8人、負傷32人以上)について、警察は5月17日朝、踏切バリア担当者を「過失致死罪+過失致重傷罪(กระทำการโดยประมาทเป็นเหตุให้ผู้อื่นถึงแก่ความตายและบาดเจ็บสาหัส)」で起訴したと公表した。前日深夜から拘束して取り調べを進めていたが、供述記録完了後に保釈処分となった。列車運転士・公共バス運転手の双方に対する「過失運転致死罪」立件方針に続く、第3の刑事責任追及で、事故の構造的責任分担が3者にまたがる構図が浮かび上がっている。
踏切バリア担当者の起訴
警察の発表によれば、5月16日深夜の段階で既に踏切バリア(遮断機)担当者を任意同行で拘束していた。一晩かけて取り調べを行い、供述を記録した結果、5月17日朝の段階で「過失致死罪+過失致重傷罪」での起訴を決定した。
タイ刑法第291条(過失致死)、第300条(過失致重傷)が適用される。刑罰は最大10年の禁固刑または最大20万バーツの罰金、もしくは両方が科される可能性がある。なお、起訴後は身柄拘束を解除し、保釈処分とした。
追加の罪状については、証拠と詳細な供述の精査が完了次第、検討するとしている。現時点で起訴対象は踏切バリア担当者1人のみで、SRT(タイ国鉄)の他の社員や交通警察に対する立件は発表されていない。
3者にまたがる刑事責任の構図
今回の起訴で、マッカサン事故の刑事責任は3者に広がった形だ。
第1に、公共バス(206系統)の運転手—線路上に停車してバリアの作動条件を満たさなかった「直接の過失」。第2に、貨物列車4531号の運転士サヨムポン・スワンクン氏(46歳)—制動・警笛措置が間に合わなかった「不十分な対応」の過失。第3に、踏切バリア担当者—列車接近を察知してバリアを下ろす対応、線路上停車車両の排除連携、いずれかでの不作為または判断ミスの過失。
警察庁本部のサヤーム・ブンソム長官と、現場視察したキッティラット・パンペット国家警察庁長官の発言から、捜査の3つの主要論点—列車とバスの距離、列車の速度、接近時間帯—は引き続き精査中で、最終的な責任分担と起訴範囲は今後変動する可能性がある。
証拠車両の取り扱いと被害者対応
警察は5月17日朝の段階で、損害を受けた車両群を分散管理している。マッカサン警察署の駐車場には、巻き込まれた乗用車(約5台)とバイク(約3台)の損壊車両が並べられ、保険会社の鑑定・証拠検証を待っている。206系統公共バスは事故現場近くで保管中、貨物列車の機関車はマッカサン操車場に運ばれて検査中だ。
並行して、被害者の身元確認と家族へのDNA鑑定が進められており、5月17日朝までに5人の家族がDNA採取を完了した。ラチャテーヴィ区役所が遺族向けの連絡窓口を開設し、BMA(バンコク都庁)とSRTの連携で復旧と支援が進んでいる。
タイの交通事故と公共交通の現状
タイの交通事故死者数は年間約2万人前後で、人口10万人あたり約27〜29人と世界保健機関(WHO)の統計でも上位常連だ。バンコクの公共バス(BMTA運営)は1日約3万便を運行し、利用者数は1日100万人を超える規模で、タイの都市交通の中核を担っている。一方で踏切事故・列車事故は近年、SRT(タイ国鉄)の運行路線の都市部交差で散発しており、マッカサン区間でも過去にも事故が記録されている。