タイ投資委員会(BOI)が5月17日、世界的なPCB(プリント回路基板)製造企業3社の第2期投資220億バーツ超を承認したと発表した。3社の第1期投資350億バーツと合わせれば累計570億バーツ(約2,620億円相当)規模に達し、AIサーバー・データセンター・高速通信・スマート電子機器の需要拡大に対応する。新規雇用は5,000人を見込み、第1期の7,000人と合わせて累計1万2,000人超の雇用創出となる。3社のうちCompeq Technologyは世界第5位のPCBメーカーで、サムットプラカーンに既に大規模工場を構えている。アジア地域の半導体サプライチェーン拠点としてのタイの位置づけが一段と高まる動きで、日本企業の取引先・サプライヤーとしての存在感にも追い風となる。
5/17の承認内容
BOIのナルトム・トード・ステーラサック事務総長が5月17日、投資承認を公表した。BOIの投資案件審議小委員会(คณะอนุกรรมการพิจารณาโครงการ)が、PCB世界大手3社の第2期投資申請を承認した形だ。
第1期投資350億バーツに第2期投資220億バーツを加え、累計570億バーツ規模に。タイをアジア地域の高度電子産業・デジタル産業のハブにする戦略の柱で、半導体サプライチェーンの川下(後工程)であるPCB製造でASEANトップ、世界トップ5入りを狙う。
投資の用途—AIサーバー・データセンター需要
承認された投資の中心用途は、AIサーバー(データセンター内の演算機器)、高速通信システム、スマート電子機器などの「未来テクノロジー産業」だ。AIブームに伴う世界的なデータセンター建設ラッシュと、5G/6Gなどの高速通信インフラ拡張で、PCBの需要は急増している。
タイは(a)税制優遇のBOI制度、(b)既に整備された自動車・電子産業のサプライチェーン、(c)ASEAN中核の地理的優位、(d)豊富な技術労働力を武器に、台湾・中国に並ぶ高度PCB生産拠点としての地位を固めつつある。
3社のうちCompeq Technologyとは
承認された3社の代表格がCompeq Technology(台湾本社)だ。Compeqは世界第5位のPCBメーカーで、自動車(EV含む)、スマートフォン、データセンター、ノートPC、サーバーなど幅広い市場に基板を供給している。
タイ法人「Compeq (Thailand) Co.」は2024年末にサムットプラカーン県アジア工業団地内(112ライ=約18ヘクタール)に第1期工場を開業。第1期投資額は104億バーツで、現在600人を雇用、2026年中に1,500人体制を目標としている。今回の第2期承認で、雇用枠とラインがさらに拡大する。
残り2社と業界全体
BOIは今回、Compeq以外の2社の社名を冒頭発表では公開していないが、過去のBOI承認実績からみるとTaiwan PCB Techvest、Apex Circuit、WUS Printed Circuit、Chin-Poon Industrial、Unimicron Technologyなど、台湾系のPCB大手が拡張投資の候補に挙がっている。
タイのPCB産業全体では、過去2年間にBOIが約2,000億バーツ規模の投資を承認しており、生産能力・雇用ともにASEAN最大の規模に膨らんでいる。隣国ベトナムも追い上げており、タイ・ベトナムの2強が世界のPCB供給地図を書き換える流れだ。
関連背景
PCB産業の集積は、(a)日本の自動車部品・電子機器メーカーがタイ現地調達できる範囲を広げる、(b)在タイ日本企業の生産コスト・サプライチェーンレジリエンスを改善する、(c)技術職・エンジニア職の現地雇用を拡大する、という3つの形で日本企業に追い風となる。
特に在タイ自動車産業(トヨタ、ホンダ、デンソー、アイシン等)はEV化に伴ってPCB需要が急増しており、ローカル調達ルート確保が経営課題となっている。今回の発表で、サムットプラカーン・チョンブリ・ラヨーンの東部経済回廊(EEC)地域でのPCB供給網がさらに厚くなる。
駐在員家庭の生活面では、PCB工場の新設・拡張で工業地帯の交通量・住宅需要が増し、サムットプラカーン・チョンブリ地域での日本人居住エリアの賃貸相場・通勤事情にも影響する可能性がある。