タイ下院が5月20日、1991年小切手不渡り罪法(พระราชบัญญัติว่าด้วยความผิดอันเกิดจากการใช้เช็ค พ.ศ. 2534)を廃止する法案を第1読会で可決し、特別委員会の審議に入った。元法務相のタウィー・ソットソン警察大佐(国民党党首、リスト議員)が5月21日に自身のFacebookで明らかにしたもの。Khaosodが同日報じた。
タイの収監者は2026年5月時点で全国327,478人。このうち小切手不渡り罪で収監されているのが555人いる。タウィー氏の主張は明快である。「支払いができなかったこと」に刑事罰を科す仕組み自体が、民事の不履行を刑事で処理する不自然な制度であり、憲法第77条にも国際標準にもタイの経済実態にも合っていない、というものだ。タイのSNSではこの仕組みが古くから「クック・トゥアン・ニー(債務取り立て刑務所)」と呼ばれて批判されてきた。
法案は前国会期から継続審議されていたが、2025年の解散で一旦止まっていた。選挙後の新政権が改めて閣議で確認し、下院に提出した形である。タウィー氏自身が法務相在任時から廃止を提唱しており、Facebookで「自分が提案して閣議に上げた」と経緯を説明している。
引っかかったのは555人という数字の重みだ。全収監者の0.17%。少ない、と見るか、それでも刑務所にいる人が555人もいる、と見るかで意味が変わる。小切手1枚で人が刑務所に入る制度を維持してきた35年間の妥当性を、この機会に問い直す改革と読める。
第1読会通過は最初の関門である。特別委員会での詳細審議、第2-3読会、上院、国王署名と段階が残っている。中小事業者の取引現場で何が代替手段になるのか、民事処理の迅速化はどう進めるのか、ここから具体論が始まる。

