タイの電力大手GPSC(グローバル・パワー・シナジー)が、小型の原子力発電所(SMR)の建設に前向きな姿勢を示した。国が新たにまとめる電力開発計画「PDP2026」で、原子力が初めて選択肢に加わったのを受けたものだ。急増するデータセンターの電力需要に、二酸化炭素を出さないクリーンな電源で応えるのが狙いで、長らく実現しなかったタイの原発が、にわかに現実味を帯び始めている。
PDP2026に初めて原発が
PDP2026は、2026年から2050年までの25年間を見据えた電力計画で、今年8〜9月ごろの確定が見込まれている。2050年までに発電に占めるクリーンエネルギーの比率を6割以上に高める目標を掲げ、その手段の一つとして、初めて小型モジュール炉(SMR)が盛り込まれた。SMRは、従来の大型原発より小さく、工場で作った部品を現地で組み立てられる新しいタイプの原子炉で、建設期間の短さや安全性の高さが売りとされる。計画では、まず国営発電公社(EGAT)が主導し、東北部と南部にそれぞれ300MW級のSMRを導入する構想が示された。長期的には、数千MW規模の原子力を見込む。
GPSCは2,400MWを検討
民間のGPSCも、この流れに加わる構えだ。同社は、PDP2026に基づく発電事業への参画を表明し、2,400MW規模のSMR投資を検討している。自社の発電に占めるクリーンエネルギーの比率を6〜7割へ引き上げる方針で、デンマークの原子力開発企業と組み、SMR技術の実現可能性を2024年から2027年にかけて調べている。溶融塩を使う次世代の炉など、安全性を高めたとされる技術の採用も視野に入れる。タイの電力需要は今後さらに膨らみ、2050年には7万7000MWに達すると予測されており、大量の電源をどう確保するかが課題となっている。
データセンターがけん引
原発検討の背景にあるのが、データセンターの急拡大だ。クラウドやAIのサービスを広げようとする海外の大手企業は、大量の電力を、しかもクリーンな電源で確保することを求めている。タイ政府はこの需要を取り込むため、大口の利用者が発電事業者から電力を直接買える仕組みや、データセンター向けの新しい電気料金の区分を用意した。天候に左右される太陽光や風力だけでは、24時間安定して大量の電力を供給するのは難しい。そこで、出力が安定した電源として、原子力に白羽の矢が立った形だ。
長年の議論に転機か
タイでは、原子力発電はこれまで何度も検討されながら、住民の反対や安全性への懸念から実現してこなかった。とくに2011年の福島第一原発の事故以降は、慎重論が根強く残る。今回、小型で安全性を高めたとされるSMRという新しい選択肢が国の計画に加わったことは、その議論に一つの転機をもたらす可能性がある。ただ、実際に原発を動かすには、法律や規制の枠組みの整備に加えて、何より国民の理解が欠かせない。データセンターの時代に膨らむエネルギーをどうまかなうのか、タイのエネルギー政策は大きな岐路に立っている。

