タイの観光・スポーツ相スラサック・パーンチャルーンウォラクン氏が5月21日、外国人観光客から徴収する「ランディング・フィー(上陸料)」を、当初案の300バーツより高い水準に引き上げる方向で検討していると明らかにした。新しい徴収方式とセットで設計されるもので、徴収した料金の一部は外国人観光客向けのプレミアム保険補償に充てられる。
これまでの300バーツ案は、空路で入国する外国人1人あたりに課す観光税のような位置づけだった。それが「+α」になるという話で、上乗せ分は「タイ滞在中に病気・事故に巻き込まれた観光客に補償が出る保険」のための原資、というのが今回のポイントだ。
スラサック氏は会見で、徴収モデルと価格水準の両方を最終調整中であること、「観光客の旅行決定に悪影響を与えないバランス」を取るのが前提だと説明した。要は、足元を見て吹っかける気はない、観光産業を冷やさない範囲で押さえる、というメッセージである。
300バーツの内訳と上乗せ後の最終水準、保険の補償範囲、徴収を航空券に組み込むのか入国時に取るのか、といった具体は今回の発表では詰めきれていない。「+いくらかはまだ言えない」段階の話だが、それでも観光相が公の場で「300バーツより上」と先に言葉にしたのは小さくない。タイの観光政策が「数を稼ぐ」から「質を稼ぐ」へ寄っていく流れの中で、入国コストに保険を組み込むという発想自体が、これまでとは異なる方向の踏み込みになる。
引っかかったのは、この話が「60日無料ビザの30日への戻し」という別の議論と並走している点だ。長期に居座る観光客のふりをした長期滞在者を制度的に減らす一方で、来てもらう短期客には少し多めに払ってもらい、その分の安全を保証する。タイ側の組み立てとしては筋が通っている。
日本からの観光客のように、もともと旅行保険にきっちり加入してから来る層にとっては、新しい保険がどこまで意味を持つかという疑問は当然出てくる。重複の調整はあるのか、補償範囲は手持ちの保険を上回るのか。発表段階ではこのあたりに踏み込んだ説明はなく、6月以降の追加発表を待つことになる。
数百バーツの上乗せそのものは、バンコク市内のタクシー2回分くらいで、旅程の決定打にはなりにくい金額だ。ただ「300バーツの上を行く」という言い回しからは、500バーツや1,000バーツも視界に入っている雰囲気が漂う。実際にいくらに着地するか、6月の確定発表が次の山場になる。

