5月21日、バンコクのラチャダピセック通りにある刑事裁判所で、ラムプーン県の「業修正師」事件の容疑者パイサーン氏(67)に対する拘留申請の審理があった。中央捜査局犯罪鎮圧部の捜査官が容疑者を裁判所に同行させ、罪状の説明と拘留延長を求めたが、結果として裁判所は保釈を承認した。
この日に公開された拘留申請書には、事件の起点となった被害者第1号(15歳以上18歳未満の青年)の被害状況が具体的に書かれている。青年は慢性的な頭痛を抱えていて、一般の病院では「治しきれない」と言われていた。藁にもすがる思いの母親が、超自然的な力でこの種の不調を治してくれると評判だったパイサーン氏のもとへ連れていった。容疑者がテレビ番組への出演で名前を知られていたことも、母子が信頼に足る相手と感じる材料になったという。
訪れたのは2026年5月2日、場所はラムプーン県パーサーン町。母子は順番待ちの行列に並んだ。午後5時半、パイサーン氏は青年に「君は業が重いから最後の順番にする」と告げた。そして夜7時半、容疑者は青年だけを「2号室」と呼ばれる部屋に呼び入れ、衣服を脱がせて性的なわいせつ行為に及んだ。終わりに「このことは誰にも話すな」と口止めしたという。母親は別室で待たされたままで、何が起きていたか知らなかった。
青年は5月7日、警察に被害を打ち明けた。これが立件の出発点になった。罪状は、抵抗できない状態にある他人への強姦と、15歳以上18歳未満の未成年を保護者の管理から誘拐してわいせつ目的に置いた罪である。
驚かされるのは、警察側が拘留の延長を求めて身柄を引いてきたその場で、裁判所が保釈を認めたという順番だ。日本のニュース読者には少し見慣れない展開かもしれない。タイの拘留申請は、検察起訴前に警察が捜査時間を確保するための制度で、その審理の場で被告側から保釈申請が出されることがある。今回はそれが通った形になる。保釈金額や条件の詳細は本記事執筆時点で公表されていない。
業修正師(アーチャーン・ケーカム)というのは、過去世の業(カルマ)を取り除く技を持つとされる民間の宗教実践者のことだ。タイの民間信仰のグレーゾーンに位置する存在で、テレビのスピリチュアル番組に出ると視聴率が取れる定番のキャラクターでもある。「信仰の入り口にテレビの有名人を置く」という構図は、別の角度から見れば、悩みを抱えた人の警戒心を下げる仕掛けでもある。今回の事件で母親が安心して我が子を連れていけたのは、まさにその仕掛けが効いていたからだ。
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