タイのシンハー(Boon Rawd)一族の御曹司として知られる俳優サイ・スコット(シーラナット・スコット、29)が5月8日、自身のFacebookで号泣しながら長年抱えてきた家族内の告発を公にした。十代の頃から実兄に複数回性的暴行を受けたこと、家族全員が録音で事実を知りながら誰も助けなかったこと、そして現在は実母から遺産を巡り「親不孝者」として訴えられていることを明らかにした。タイ社会で大きな衝撃が走っている。
シンハー一族のサイ・スコットが涙の告発、兄からの少年期の性的暴行
サイ・スコットは自身のFacebookページ「ทราย – Merman Ψ」で、涙ながらに語る動画を投稿した。「私を『シンの後継者(タヤート・シン)』と呼ばないでほしい。これまで皆は知らなかったかもしれないが、私の兄は私を性的に襲ったのだ」と切り出し、続けて「一度だけではなく、十代の頃に何度もそうしたことがあった」と告発した。サイは父親が早世したのち、シンハー(Boon Rawd)一族の御曹司として注目を集めてきた人物だ。
家族全員が知っていたが助けはなく、29歳での実名告発
サイは自分が録音していた音声で兄が「告白」していることを家族全員が知っていたと述べた。しかし「私の人生の中で、誰も助けてくれる大人はいなかった」と語り、「私はすべてを一人でやってきた、選択肢がなかったから」と続けた。今年30歳を迎える直前に当たる年齢で、性犯罪としての訴追も含めた正義(justice)が一度も得られなかったことを強調した。今回の告発は、長年沈黙を守ってきたサイ自身の決断によるものだ。
母親が遺産訴訟で「親不孝者」呼ばわり、家族との断絶宣言
衝撃的な事実関係はもう一つある。今年に入り、サイの実母は祖父からサイに継承された資産を巡って、サイ本人を訴える行動に出たという。母はサイを「親不孝な子」と非難し、サイが家族のことを世間に話したことを問題視している。サイは「家族の中で、私の人間としての価値や心を見てくれない人たちと一緒に暮らすことはできない」と述べ、家族との断絶を宣言した。一族の年長者にも助けを求めたが、「母に謝ってこい」とだけ言われ、行き場を失ったと語る。
タイ社会の大企業一族と内部告発、被害者の声を黙らせる構造
シンハー(Boon Rawd Brewery)はビール「シンハー」「レオ」で知られるタイ最大級のオーナー企業で、ブンロード家は政財界に強い影響力を持つ。今回の告発は、大企業ファミリーの内部で性犯罪被害が長期間にわたり隠蔽されたという深刻な内容を含んでおり、タイ社会では「大手ファミリーの後継者という看板の代償」として議論を呼んでいる。在タイ日本人にとっては直接の生活影響は薄いが、タイの巨大企業のブランドイメージと内部統治の乖離を示す事案として、芸能ニュースの枠を越えて社会的関心が高まっている。被害者の声を黙らせる構造をどう打破するかが、ジェンダー・人権・企業統治の3側面から問われる局面となる。