タイ東北部ブリーラム県の国境地帯で、蛙取りに出ていた地元住民2人が10人を超えるカンボジア兵に追跡され、バイクを放棄して逃走する事案が発生した。住民は約2時間潜伏してかろうじて逃げ延びた。発生場所は「国境から1〜2キロメートル内陸のタイ領」とされ、住民は「明らかにタイ側」と主張している。タイ・カンボジア国境の緊張が現場レベルで日常化していることを示す事案だ。
ブリーラム県でタイ住民2人がカンボジア兵に発砲され、バイク放棄して逃走
事案はブリーラム県バーンクワット郡チャンタベッチ町ブタプーム地域の「メンポン基地」上方の台地で発生した。当該地域はタイ側が主権を主張する区域だ。前夜午後7時から8時30分頃、地元住民のアピラック・ブットペッチ氏(63)と弟の2人が蛙取りに出掛けたところ、暗闇の中で複数の懐中電灯の光に気づいた。同じ村の住民かと思い近づくと、銃と刀で武装したカンボジア兵約3名と遭遇した。
約10人のカンボジア兵が追跡、銃声1発で2時間潜伏
最初に遭遇した3人の後ろから、さらに約10名のカンボジア兵が追ってきたという。銃声1発が鳴り響き、住民2人は身を低くして草むらに身を潜めた。約2時間動かずに息を殺し続け、追跡をやり過ごしてからバイクを置いてかろうじて脱出に成功した。怪我はなかったが、暗闇の山中で武装兵に追われた恐怖は相当なものだったと語っている。翌朝、タイ側の治安部隊と警察が住民を放棄したバイクの場所まで同行し、乗物を回収した。
アピラック氏「国境から1-2km内陸、明確にタイ側」と主張
アピラック氏は取材に対し「現場は国境線からタイ側に1〜2キロメートル入った内陸の場所だった」と明言した。同地域は密輸業者が国境をまたぐ自然な通路として使う森林地帯で、地元住民が農業や蛙取りなどの日常活動でしばしば出入りする場所だ。住民の認識ではタイ領土内であることに疑いがなく、そこに重武装のカンボジア兵が踏み込んできて住民に発砲した形になる。
タイ・カンボジア国境の緊張、密輸ルートと住民の生活圏
ブリーラム県を含むタイ東北部の国境エリアは、世界遺産級の遺跡(プレアビヒアなど)を巡る歴史的な国境争いの舞台でもあり、近年もカンボジア側との小規模対立が散発している。地元住民の生活圏と密輸業者の越境ルートが重なるため、夜間に武装パトロール隊と地元住民が遭遇するリスクは現実問題として残っている。在タイ日本人駐在員にとっては直接の影響は薄いが、観光や出張で東北部の国境エリアを訪れる際は、夜間の単独行動を避け、現地ガイドと同行するなど基本的な防衛策が必要になる。タイ陸軍は今後、現場の検証と外交ルートでのカンボジア側への抗議を進める方針だ。