タイのパトゥムターニー県ムアン郡バンプーン町にあるワット・ブンチューンチュー(วัดบุญชื่นชู)の住職プラクル・パチュムプニョーパーシャイトゥーン・チョーンバムルン氏(67歳)が2026年5月1日、8年前に信徒から寄進された金50バーツ重量分(約700グラム)の仏像頭部が「2〜3%しか金が残らず大半が真鍮にすり替えられていた」事件で、犯人を刑事および民事で告発した。前日4月30日に検査で発覚した「金仏像のすり替え疑惑」が、24時間以内に正式な刑事事件へ進展した形だ。
事件の経緯は、信徒の家族が金延べ棒45バーツ重量分(約683グラム)を、住職と地域信徒が拠出した金約2バーツ重量分と合算し、計47バーツ(710グラム)の金を仏像頭部の鋳造用に寄進したことから始まる。8年前の寄進から時間が経過した2026年初頭、家族側が「本当に純金で鋳造されたのか」と疑問を持ち、住職と相談の上で2026年4月30日に金店「ナモ・バーンチャーンドーン」へ検査を依頼。プロ用機器で測定した結果、金分は2〜3%にとどまり、残り97〜98%は真鍮(亜鉛+銅の合金)だったことが判明した。
事件を受けて住職は5月1日にパトゥムターニー警察署で告発状を提出し、刑事告発(盗難・詐欺・公文書偽造)と民事訴訟(寄進金相当額の返還請求)の両方を進める。寄進金47バーツの現在価格は約305万バーツ(約1,370万円)に相当し、被害規模は宗教関連の盗難・詐欺事件としても大きい。警察は寄進された金の鋳造工程に関わった業者・職人・寺院内部の関係者を順次呼んで調書を取る方針を示している。
タイ仏教社会では「寄進された金の一部または全部がすり替えられる事件」が断続的に表面化しており、地方寺院では特に深刻な問題となっている。鋳造作業は外部の業者に委託されるケースが多く、その過程で金を抜き取って真鍮を混ぜ込む手口が知られている。今回のワット・ブンチューンチューの事件は、Facebook・TikTokで金店ナモが検査の様子を公開したことで全国的な話題となり、他の寺院でも同種の検査を実施する動きが出始めている。
在タイ日本人にとっては、タイの寺院で「金製品を寄進する場合のリスク」を考えさせる事件だ。お守り・仏像・金線などの寄進品を本物と確信して納めても、保管・鋳造・修復の過程ですり替えられるリスクが現実にある。タイ仏教の寄進文化は功徳(メリット)を重視するもので、金の純度を疑うこと自体がタブー視される傾向もあるが、今回の事件は「寄進した側にも検査する権利がある」という前例となった。プラクル住職は「他の寺院でも同様の問題があるはずだから、みんな確認してほしい」と発言している。