タイ中部サラブリ県の森の水路で、両手を手錠でつながれ胸を撃たれた男性の遺体が見つかった事件で、被害者の身元が判明した。亡くなっていたのは、40歳の元受刑者の男だった。麻薬の密売に絡んだ「処刑」の可能性が指摘されている。連絡を受けた母親は、息子の死に「驚かなかった」と語ったという。
胸と顎のタトゥーで判明した身元
被害者は、ナコンラチャシマ県出身のレック・ロッスワンさん(40)。胸に大きく彫られたドラゴンのタトゥーや、あごの両側に入った文字のタトゥーといった特徴から、身元が割り出された。手錠で後ろ手に拘束され、胸を2発撃たれた状態で、墓地に通じる道路脇の水路に遺棄されていた。
警察は、犯行が麻薬の密売に絡んだものとみて捜査を進めている。防犯カメラの映像を調べ、被害者が最後にたどった足取りを追っているが、容疑者はまだ特定されていない。
「驚かなかった」、母が語った息子の人生
事件の輪郭をいっそう重くしているのが、母親の言葉だ。母親は警察に対し、息子の死を知らされても驚きはなかったと話したという。
息子は16歳のときに傷害事件で服役した前科があり、刑務所を出たのはわずか5〜6カ月前だった。6月11日には、母親に3,000バーツを無心する電話をかけ、最終的に1,000バーツ(約4,900円)だけが送られた。それが、息子との最後のやり取りになった可能性がある。
後を絶たない「裏社会」の処刑
手錠で拘束したうえで複数回撃ち、人目につかない場所に遺棄する。今回のような手口は、怨恨や報復、麻薬をめぐる組織内の制裁といった「裏社会」の論理をうかがわせる。タイでは、麻薬の売買に関わった人物がこうした形で命を落とす事件が後を絶たない。
出所からわずか数カ月、再び裏の世界に足を踏み入れたとみられる40歳の死は、薬物が個人と家族に落とす影の深さを、改めて突きつけている。事件の真相は、今後の捜査で明らかになる。