タイ東北部ウドンタニ県ムアン郡マークケーン町のシーチョムチューン通り、ラチヌティス女学校裏で5月16日午後21時15分、弁護士記章「天秤マーク(ตราชั่ง)」のシールを貼ったホンダの乗用車が、配達待ちで停車していたバイクライダーに突入、その後電柱に激突する事故が発生した。被害者は42歳のフードデリバリーライダー、マニット氏(軽傷)。運転していた弁護士は酩酊状態で立っていられないほどで、警察のアルコール呼気検査を拒否し、駆け付けた警察官と救助隊員を指差して罵倒した。タイ社会の「権威の傲慢」をめぐる典型例として地元紙で大きく報じられている。
5/16夜の事故—弁護士マーク車が暴走
事故発生は5月16日午後21時15分頃。191緊急通報センター(ウドンタニ)に「乗用車がバイクと電柱に衝突した」との通報が入った。ウドンタニ警察署(สภ.เมืองอุดรธานี)とソンサーマタムー財団ウドンタニ支部の救助隊が現場に駆けつけた。
現場で確認されたのは、ホンダの乗用車(ウドンタニナンバープレート、フロントに弁護士記章「天秤マーク」のステッカー)。車体前方は大破し、タイ地方電力公社(PEA)管理の電柱に激突していた。近くには停車中のホンダのバイクが木と学校フェンスに張り付くように倒れており、強い衝撃で大破していた。
被害者—配達待ちのフードデリバリーライダー
被害を受けたのは、42歳のフードデリバリーライダー、マニット氏(性は警察により非公表)。事故発生時、配達の合間にバイクを停めて待機していたところに乗用車が突っ込んできた。軽傷で済んだのは幸いだが、衝突の衝撃でバイクは廃車レベルの損壊を受けている。
タイではフードデリバリー(Grab、Lineman、Foodpandaなど)のライダーが街中の至るところで「配達待ち停車」をする光景が日常化しており、こうした事故に巻き込まれるリスクは構造的に高い。
弁護士は「立つこともままならない」酩酊状態
警察の現場取り調べに対し、運転手は明らかな酩酊状態だった。立っていられないほどフラフラ、ろれつが回らず、警察官と救助隊員を指差して文句を言うような態度を見せた。本人は「飲み会から帰る途中だった」と認めたが、警察の呼気アルコール検査は拒否した。
タイの陸上交通法では、警察の呼気検査拒否はアルコール濃度が法定上限を超えたと推定されるため、検査拒否そのものが処罰対象になる。さらに、飲酒運転による人身事故(過失致傷)として刑事責任を問われる見通しで、弁護士業の懲戒手続きにも進む可能性がある。
なぜ「弁護士マーク車」が話題になるのか
タイでは弁護士が自家用車のフロントガラスや車体側面に「天秤マーク(ตราชั่ง = 正義の天秤)」のステッカーを貼る慣習がある。これは弁護士会に登録された専門職の象徴で、本来は「法律遵守の象徴」として誇りを示すためのものだ。
しかし、今回のように天秤マーク付きの車を運転する弁護士本人が飲酒運転で重大事故を起こし、検査拒否までするとなると、社会的批判が一気に集中する。タイのSNSでは「弁護士が法律を一番破る」「天秤の意味は何だ」といった怒りのコメントが拡散している。
関連背景
直接の影響は少ないが、在タイ日本人駐在員・観光客が押さえるべき点は次の3つだ。
第1に、タイの飲酒運転検挙は近年急速に厳しくなっており、外国人でも逮捕・起訴・国外退去・ビザ取消の対象になる。タイの法定アルコール濃度上限は血中50mg/dL(運転免許5年未満は20mg/dL)で、ビール1〜2杯で超える水準。第2に、夜間の運転では今回の事故のように「酩酊した地元住民の暴走」に巻き込まれるリスクがある。深夜の幹線道路・繁華街周辺では特に車間距離を取る。第3に、自分が事故被害者になった場合、相手のアルコール検査を警察に依頼することが慰謝料・治療費の保険請求で重要な証拠になる。
タイ警察の191緊急通報、または1646(バンコク交通警察)が利用可能。事故時はまず安全な場所に避難、その後通報という順序を守るのが鉄則だ。