タイ国家警察庁のキッティラット・パンペット長官(ผบ.ตร.)が5月16日午後21時、バンコク・マッカサン駅近くで発生した貨物列車対公共バス衝突事故(死者8人、負傷32人以上)の現場を視察し、「防犯カメラ映像でバスが線路上に停車していたことは明確」と発言した。同時に遮断機(バリア)の担当者の口供取り調べを急ぐ方針を示し、捜査の3つの主要論点—列車とバスの距離、列車の速度、接近時間帯—の結論を待って最終的な責任分担を確定させる計画だ。事故処理は同日深夜0時までに完了予定で、アーソク-ディンデーン通りの路面復旧が翌朝までに進む見通し。
警察長官の現場視察—バス過失を明確化
5月16日午後21時、タイ国家警察庁キッティラット・パンペット長官が事故現場のアーソク-ディンデーン通り、エアポートレールリンク・マッカサン駅近くで現場視察を行った。視察後の記者団への発言ポイントは次のとおりだ。
防犯カメラ映像から、公共バス(206系統)が線路を跨ぐかたちで停車していたことが明確と確認。バス側の過失は事実として確定的とみている。バンコク警察庁本部にも、捜査関連の指示を出し、3つの主要論点を急いで詰める方針を共有した。
ただし、警察長官の発言は「バスの過失明確」に留まり、列車側の過失や遮断機の機械的・人的要因については「これから詰める」段階。15:00時点で警察庁長官(พล.ต.ท. サヤーム・ブンソム氏)が「列車・バス運転手の双方過失」として過失運転致死罪での立件方針を発表したのと比べ、トーンに微妙な差がある。最終的な責任分担は捜査結果が出てから確定する。
捜査の3つの論点
警察長官が結論待ちと述べた3つの論点は次のとおり。
第1に、事故時点の列車とバスの距離。距離が判明すれば、列車運転士が異常を視認してから衝突までの猶予時間が計算でき、制動・警笛措置が間に合った可能性があるかが判定できる。
第2に、列車の速度。タイの貨物列車は時速60〜80km程度で走るのが一般的だが、市街地区間では徐行義務がある場所もある。今回の地点で列車側の速度が妥当だったかが争点になる。
第3に、列車接近時の時間帯。遮断機の作動状況、バスが線路上に停車してから列車が到達するまでの経過時間、信号機の表示状態などが、捜査責任者の判断材料となる。
遮断機担当者への口供取り調べ
警察長官は「遮断機担当者(คนคุมไม้กั้น)」の口供取り調べを急ぐと明言した。タイの主要踏切には人員配置型と自動型が混在しており、マッカサン地区の踏切は人員配置型に近い運用とみられる。担当者が(a)列車接近を察知して遮断機を下ろす操作をしたか、(b)交通警察と連携して線路上の停車車両を排除する努力をしたか、(c)遮断機が作動しない構造的な問題を承知しながら対応を怠っていなかったか、などが論点だ。
さらに警察側は、警察庁交通警察部との連携で経路クリアの動きがあったかどうかも検証する。タイの主要踏切では通常、交通警察が信号制御と連携して列車通過時の経路確保を行う仕組みが存在するが、今回はその仕組みが機能した形跡が見えない。
復旧作業と道路再開
並行して復旧作業が進行している。SRTは事故車両の機関車と貨物コンテナをマッカサン工場へ移動。バンコク都は大型クレーンを投入し、燃え尽きた公共バス206系統と巻き込まれた乗用車を線路から撤去した。当局は5月17日午前0時までに路面復旧を完了させ、アーソク-ディンデーン通りの通常運用に戻す方針。
事故現場は駐在員も多く通る幹線道路で、運用再開が遅れれば朝の通勤ラッシュへの影響が拡大する懸念があった。バンコク都は「真夜中までに完全復旧」と発表しており、5月17日朝の通勤時には通常運用に戻るとみられる。
関連背景
今回の事故は、踏切バリア(遮断機)が必ずしも常に安全を保証しないことを示した。在タイ日本人ドライバーが踏切で気をつけたいのは次の点だ。
第1に、遮断機が下りていない・警報音が鳴っていないからといって「列車が来ない保証」ではない。バリアが完全に下りない構造の踏切がタイには複数存在する。第2に、踏切手前で必ず一旦停止し、左右を目視で確認する習慣。タイの陸上交通法第63条で義務付けられている。第3に、自分の前の車両が線路上に停車しそうな場合は無理に進まず、5m手前で待つ。先行車両の動きを過信しない。