タイ東北部ブンカン県のメコン川岸で7月2日の未明、555万錠もの覚醒剤「ヤーバー」が押収された。ラオス側から川を渡って運び込まれる密輸を、メコン川を警備する海軍の部隊が摘発した。犯人グループは暗闇に紛れて逃走したが、大量の覚醒剤がタイ国内へ流れ込むのを、水際で食い止めた形だ。
未明の川岸で555万錠
摘発したのは、メコン川沿いの治安維持にあたる海軍の部隊「メコン川警備隊(ナラカー)」だ。海軍の報道官によると、越境した麻薬組織がメコン川を使ってタイに麻薬を持ち込むとの情報を得て、ノンカイ地区の部隊が地元の治安機関と連携し、待ち伏せをしていた。7月2日の午前3時ごろ、ブンカン県ムアン郡ブンカン町のバンターカイ地区で、ラオス側から来たエンジン付きの小型ボートを発見した。何者かが黒い袋を次々とボートから降ろし、待機していた車へ運び込んでいたという。当局が踏み込むと、グループは荷物を捨てて逃走し、ボートはエンジンをふかしてラオス側へ引き返した。
14袋に詰められた覚醒剤
現場に残された14個の袋を調べたところ、覚醒剤「ヤーバー」が合わせておよそ555万錠詰まっていた。海軍はほかに、不審な車2台と、携帯電話、デジタルはかり、関連する荷物も押収した。押収品はブンカン警察署の捜査担当に引き継がれ、逃げた実行犯の行方や、組織の全容解明に向けた捜査が進められる。海軍の報道官は、水際で大量の麻薬の流入を阻止し、メコン川を運搬路とする越境組織を断つ成果だと強調した。
メコン川は麻薬密輸の最前線
今回の舞台となったメコン川は、タイとラオスの国境を流れ、麻薬密輸の最前線として知られる。上流には、ミャンマー・ラオス・タイの三国が接する「ゴールデントライアングル」があり、そこで大量に生産される覚醒剤が、川を渡ってタイへ流れ込む。ヤーバーはメタンフェタミンにカフェインなどを混ぜた錠剤で、安価に出回るため、タイ国内でも乱用が深刻な社会問題になっている。国境の川では、こうした数百万錠規模の押収が繰り返されており、それでも密輸が後を絶たないのが実情だ。タイ政府は麻薬対策を重点課題に掲げ、国軍や警察が国境地帯で取り締まりを続けているが、需要がある限り供給も途切れない。
続く水際の攻防
海軍は、川沿いの部隊を使った監視と摘発を今後も強化するとしている。ただ、川幅の広いメコンでは、闇夜に紛れて小型ボートで渡ってくる密輸を完全に防ぐのは難しい。今回のように実行犯に逃げられ、荷物だけが残されるケースも少なくない。逃走した容疑者の追跡と、背後にある組織や資金の流れの解明が、今後の焦点となる。押収量の多さは、裏を返せば、それだけ大量の麻薬が国境を越えようとしている現実を映してもいる。タイ当局にとって、メコン川の水際での攻防は、終わりの見えない戦いが続いている。
