ホンダのタイ法人が、小型車「シティ」の2026年一部改良モデルを発表した。目玉は、フルハイブリッドの「e:HEV」を車種の軸に据えた点だ。ハッチバックのe:HEVは62万9000バーツ(約306万円)から、上位の「RS」は74万9000バーツ(約365万円)で登場した。低価格帯のハイブリッド競争が激しさを増すタイ市場で、トヨタ勢に対抗する構えだ。
e:HEVを軸にした改良
今回の改良では、内外装に手を入れつつ、パワートレインの選択肢を広げた。エントリーには1.0リッターのVTECターボエンジン(3気筒、122馬力)を積む「S」を残しつつ、その上にフルハイブリッドの「e:HEV」を、V・SV・RSの3グレードで展開する。e:HEVは、1.5リッターのアトキンソンサイクルエンジンと2つのモーターを組み合わせたホンダの「i-MMD」方式で、多くの場面ではモーターが主役となって走り、エンジンは主に発電にまわる。EVのような静かで力強い出だしと、給油だけで長距離を走れる手軽さを両立するのが売りだ。ハッチバックの価格は、ターボの「S」が57万9000バーツ、e:HEVがVの62万9000バーツから、RSの74万9000バーツまでとなる。
手厚い保証も用意
保証内容も手厚い。車両本体は3年または走行10万kmまで、ハイブリッドのシステムは5年(走行距離無制限)で保証される。ハイブリッド車で気になるバッテリーにも保証が付き、購入後の不安を抑える構成だ。タイでは車両価格に加えて、保証や点検、初期のプロモーションを含めた「乗り出しやすさ」が販売を大きく左右する。ホンダは、価格を抑えた入門ターボと、燃費に優れるe:HEVを一つの車種の中でそろえることで、幅広い層を取り込もうとしている。タイ市場ではハイブリッドの選択肢が急速に増えており、価格差が縮まったことで購入を検討する層も広がりつつある。
トヨタ勢とのハイブリッド戦争
シティが戦うのは、タイで人気の高いBセグメント小型車の市場だ。とりわけ近年は、この価格帯にハイブリッドが一気に広がっている。最大のライバル、トヨタの「ヤリスエイティブ」のハイブリッドは、71万9000バーツのプレミアムと76万9000バーツのGRスポーツを用意し、燃費は最良で1リットルあたり29.4kmをうたう。さらにトヨタは新型「ヴィオス」のハイブリッドもタイに投入し、シティe:HEVとほぼ同じ価格帯でぶつけてきた。ハイブリッド技術で存在感を示すトヨタに対し、ホンダはi-MMDの走りの質と価格で応戦する構図だ。タイの新車市場では中国系のEVメーカーも攻勢を強めており、日系各社はハイブリッドを軸に対抗している。
日本では見ないアジアの主力
シティは、タイをはじめとするアジア市場向けの主力小型車で、日本では基本的に販売されていない。日本ではフィットなどが同じような役割を担うが、タイではセダンとハッチバックの両方がそろい、通勤の足から商用まで広く使われている。ホンダはタイでトヨタと並ぶ人気ブランドで、シティは長年、同社の売れ筋の一台となってきた。EVへの移行が世界的なテーマとなるなか、充電インフラや車両価格の壁が残る新興国市場では、給油のまま燃費を大きく改善できるフルハイブリッドが、現実的な選択肢として支持を集めている。手頃な価格でハイブリッドを選べるようになったことは、燃料代の負担が重いタイの利用者にとっても魅力的だ。今回のシティの改良も、その流れに沿った一手といえる。





