マツダがタイでの生産を大きく広げる。タイ投資委員会(BOI)は、マツダの合弁会社オートアライアンス・タイランド(AAT)による74億バーツ(約360億円)超の投資計画を承認した。ラヨーン県の工場を改修し、マイルドハイブリッド車(MHEV)の新型モデルを2027年から生産する。マツダはタイをMHEVの主力生産拠点と位置づけ、国内で販売するほか、日本やASEAN各国へ輸出する計画だ。
タイをMHEVの主力拠点に
今回の投資の対象は、ラヨーン県のイースタン・シーボード工業団地にあるAATの工場だ。生産設備を刷新し、ガソリンエンジンに小型モーターを組み合わせたマイルドハイブリッド(MHEV)の新型車を作る。マツダはこのMHEVについて、タイを世界の主力生産拠点に選んだ。2027年に生産ラインを稼働させ、タイ国内で売るだけでなく、日本やASEAN諸国へも輸出するという。日本の自動車メーカーがタイで生産した車を、逆に日本へ送り出す構図であり、タイの生産技術に対する信頼の高さがうかがえる。タイで作られた車が日本市場に並ぶ例はこれまでも一部にあり、今回もその流れに連なる。輸出を前提とした投資は、国内需要の変動に左右されにくい強みもある。
BOIが描く「世界の自動車ハブ」
BOIのナリット事務局長によると、承認は理事会から権限を委ねられた作業部会の会合で決まった。BOIは今回の投資を、世界市場の需要と今後の自動車技術の移行に沿ったものと評価している。タイは長年、日本メーカーを中心とする自動車の一大生産国であり、「アジアのデトロイト」とも呼ばれてきた。生産した車の多くを輸出に回す構造で、ピックアップトラックやエコカーの供給拠点として世界に知られる。近年はEVへの移行が世界的なテーマとなるなか、いきなり完全なEVに振り切るのではなく、既存のエンジン技術を生かせるMHEVのような「橋渡し」の技術にも投資を呼び込み、生産基盤を保とうとしている。
MHEVという現実解
MHEV(マイルドハイブリッド)は、エンジンを主役としつつ小型のモーターで補助する仕組みで、フルハイブリッドや完全なEVに比べて構造が簡素で、価格を抑えやすいのが特徴だ。走行中に外部から充電する必要がなく、既存の給油インフラのまま燃費を底上げできる点も、普及のハードルを下げている。電動化が急速に進む一方で、充電設備の整備や車両価格の高さといった壁も残るなか、現実的な燃費改善策として各社が採用を広げている。タイ政府もEVだけでなく、MHEVを含む電動車の生産を後押しする支援策を用意しており、今回のマツダの投資はその枠組みにも呼応した動きといえる。
裾野産業とEECへの波及
自動車の生産拡張は、部品や物流など裾野の広い産業に波及する。ラヨーン県を含む東部経済回廊(EEC)は、タイが外資の製造業を集める中核エリアで、日系企業も数多く進出している。マツダが主力拠点として投資を続けることは、こうした地域の雇用やサプライチェーンにとっても追い風となる。タイの新車市場では中国系EVメーカーの攻勢が続いており、日系各社は電動化への対応を迫られている。マツダの今回の判断は、タイでの足場を固めつつ電動化の波に乗る現実路線であり、タイを「世界の自動車ハブ」として維持できるかを占う一例ともいえる。





