タイ中部ロッブリーで、市の動物保護施設から130頭を超えるサルが脱走し、周辺の住宅街を襲った。サルたちは民家を荒らし、警察署にも侵入して机や窓を乗り越えて暴れ回った。当局は2日がかりで130頭以上を捕獲したが、「人間とサルの戦い」とまで呼ばれるこの街の長年の悩みが、改めて浮き彫りになった。
檻の屋根を揺すって脱走
脱走が起きたのは、ムアンロッブリー郡ポーカオトン地区にある市営の動物保護施設だ。比較的新しい檻「Aケージ」で、サルたちが屋根を何度も揺すって隙間を作り、そこをすり抜けて周辺の集落へ散っていった。逃げ出したサルは食べ物を求めて民家およそ15軒に被害を与え、一部はターヒン警察署に入り込んで、机や窓、備品の上をよじ登って荒らした。商店や住宅も次々と物色されたという。日本ではまず起きない光景だが、ロッブリーでは笑い話では済まされない現実の問題だ。
2日がかりの捕獲作戦
当局は半径1キロの範囲に複数の部隊を展開した。追い回す作戦がうまくいかず、途中から待ち伏せに切り替え、麻酔銃と、トウモロコシやハスの実、牛乳を仕掛けたおびき寄せ用の檻を使った。こうして2日間で130頭以上を捕まえた。ボス格のサルは特に手ごわく、麻酔ダーツで眠らせる必要があったという。一方で、同じ施設に残る1,000頭を超える他のサルが逃げ出すのは、なんとか食い止めた。
5年続く「人間とサルの戦い」
ロッブリーはアユタヤよりも古い歴史を持つ古都で、旧市街に群れるカニクイザルで世界的に知られる。中心部のプラーンサームヨートは「サルの寺」として親しまれ、毎年11月にはサルに果物や菓子を山盛りで振る舞う「モンキービュッフェ」も開かれる観光名物だ。だが、その数は制御が難しいほど膨れ上がってしまった。事態が深刻化したのは2020年のコロナ禍だ。観光客が消えてエサが途絶えると、サルたちは従来の縄張りを越え、市場や民家、役所にまで侵入するようになった。同じ年には、気の立った群れ同士が路上で大乱闘を繰り広げる様子が世界中に拡散し、話題を呼んだ。2024年には大規模な捕獲作戦で数千頭を捕らえ、多くに不妊手術を施した。それでも今回の施設には、およそ3,500頭が収容されている。
二重構造の檻で再発防止へ
施設からのサル脱走は、今回が初めてではない。昨年9月にも100頭以上が逃げ出し、同じように住宅や警察署に入り込んだ。市長は緊急の補修を指示し、古い檻の一部を、開口部のより小さい頑丈な金属メッシュに交換するという。長期的には、ボス格のサルでも突破できない二重構造の檻を新設する計画だ。サルは観光資源であると同時に、家財を荒らされ時にかまれる危険と隣り合わせの存在でもある。共存の道を探るこの街の取り組みは、終わりの見えない課題となっている。


