タイが、アメリカの海外移住専門メディア「インターナショナル・リビング(International Living)」がまとめた2026年版の世界退職移住先ランキングで、アジア1位、世界9位に選ばれた。総合スコアは80.0点。政府は結果を歓迎し、世界中の退職者を呼び込む「メディカル・ウェルネスハブ」づくりをさらに進める方針を示している。発表はラリダ副政府報道官が明らかにした。
生活費は96点、7分野で評価
このランキングは今年で35回目を数え、24カ国を7つの分野で採点して比較する。評価軸は、住居、ビザと退職者向け優遇、生活費、開発と統治、気候、医療、そして総合的な暮らしやすさだ。タイが最も高い評価を得たのは生活費の分野で、96点をつけた。物価に対して得られる生活の質の高さが評価された形だ。このほか開発と統治で84点、医療で79点、ビザと退職者向け優遇でも79点を獲得している。採点対象は24カ国で、そのなかで9位に入った。世界1位はギリシャで、東南アジアからトップ10に入ったのはタイだけだった。一年を通して温暖な気候や、外国人にも比較的開かれた生活環境も、上位評価を支える要素とされる。
医療水準とウェルネスハブ構想
医療の79点は、タイの病院が国際的に通用する水準にあることを反映している。バンコクの一部の大病院は国際的な医療認証を受け、以前から医療渡航の目的地として知られてきた。バンコクやチェンマイには外国人の受け入れに慣れた私立病院が多く、日本語での対応をうたう医療機関もある。治療費の割安さと質の高さから、タイの医療ツーリズムは長年にわたり外国人患者を集めてきた。政府はこうした強みを生かし、タイを健康や医療を目的とした長期滞在先として売り込む「メディカル・ウェルネスハブ」構想を掲げる。退職者の長期滞在は、医療や住居、日々の消費を通じて地域経済を潤す「健康経済」として位置づけられている。
退職者向けビザは2つの選択肢
実際にタイで老後を過ごすには、滞在資格が要る。代表的なのが50歳以上を対象とする「ノンイミグラントO-Aビザ(ロングステイ)」で、タイの銀行口座に80万バーツ(約390万円)を預けるか、月6万5000バーツ(約32万円)以上の収入を示すことが求められる。医療保険への加入も必須で、ビザは1年ごとの更新となる。もう一つは富裕層の年金受給者などを想定した10年有効の「長期居住(LTR)ビザ」で、年8万ドル以上の継続的な収入や25万ドルの資産などが条件となり、個人所得税が17%に軽減される優遇もある。日本ではかつてタイがロングステイ希望先の上位に挙がった時期があり、チェンマイなどには日本人の退職者コミュニティも根づいている。温暖な気候と生活費の安さ、日本人に慣れた医療環境がそろうことが、選ばれてきた理由だ。今回の評価は、そうした人気を裏づける結果ともいえる。
割安な生活費が最大の武器
タイの強みは、なんといっても生活費の安さだ。96点という突出した数字がそれを物語る。家賃や外食、交通費などが日本より大幅に低く、月あたり数万バーツで一定の生活水準を保てる点が、年金生活者に評価されている。一方で、退職ビザの資金要件や保険加入の義務、毎年の更新手続きなど、実際に暮らすうえで押さえておくべき条件も少なくない。ランキングの上位という評価は、こうした制度や生活環境が一定の水準で整っていることの裏づけでもある。世界の退職者を引き寄せる流れが続けば、タイの医療や不動産、サービス業にとっても新たな追い風になりそうだ。


