タイで、ボーイッシュな装いの女性「トム」を主役にした初めてのコンテスト「The Tom Thailand 2026」が開かれることになった。容姿の美しさを競う一般的な美人コンテストとは異なり、自信や人柄、生き方そのものを評価する場として企画されている。性的少数者に寛容とされるタイらしい、新しい試みである。
「トム」とは何か
タイのLGBT文化では、男性的な装いや振る舞いをするレズビアンの女性を「トム」と呼ぶ。英語の「tomboy(おてんば)」に由来する言葉で、その恋人にあたる女性的なパートナーは「ディー(ladyから)」と呼ばれる。タイの街中やテレビドラマ、広告などでも当たり前に見かける存在で、社会に広く根づいた呼び名である。
日本にも近い感覚はあるが、タイでは「トム」「ディー」という言葉と役割がここまで一般化している点が特徴的だ。
容姿ではなく「考え方と生き方」を審査
主催者は、今回のコンテストを芸能人のショーケースではなく、全国のごく普通のトムが名乗りを上げ、国の舞台に立てる場にしたいとしている。審査は見た目だけでなく、考え方や振る舞い、生き方の質まで含めて行われる。
大会ディレクターを務めるウィライラック・シリサコーンさん(通称ナン)は「自信と才能を持ち、人を勇気づける準備ができた全国のトムを招きたい。タイのトムのアイデンティティと可能性を全国レベルへ引き上げる舞台だ」と参加を呼びかけた。審査役の「マスター」には、メー・ウアン・リターンの名で知られるアナン・セーマトーンさんら3人が名を連ねている。
「多様性のタイ」を映す新しい舞台
タイはトランスジェンダーの美の祭典「ミス・インターナショナル・クイーン」を生み出すなど、性の多様性を前面に出したイベントが盛んな国である。2025年には同性婚も施行され、性的少数者の存在が制度の面でも認められつつある。
そうした流れのなかで、これまで主役になりにくかった「トム」に光を当てる今回のコンテストは、タイ社会の多様性をまた一つ可視化する試みといえる。旅行や生活でタイを訪れる人にとっても、この国の空気を知る手がかりになりそうだ。
