タイが2026年版の「海外リタイア先指数(Retirement Abroad Index)」で世界2位に選ばれた。ロンドンに拠点を置く国際保険会社エクスパトリエイト・グループがまとめた指標で、100点満点中77点。首位フィリピン(78点)にわずか1点差まで迫り、コロンビアやポルトガル、スペインといった定番の移住先を上回った。順位を押し上げたのは、医療と保険の評価の高さである。
ランキングはどう決まったのか
指数は世界20か国を対象に、医療の質、ビザの取りやすさ、健康保険の要件、生活費、移住者コミュニティへのなじみやすさという5項目を、それぞれ20点満点で採点して合計したもの。上位はフィリピン78点、タイ77点、コロンビア73点、ポルトガル71点と続き、南アフリカとスリランカが69点で並んだ。長く「ヨーロッパの定番」とされてきたポルトガルやスペインを、東南アジアや南米の国が抜いた形になる。
採点の裏付けには、生活費や医療を数値化するNumbeoの2026年版指数、国連の国際移民統計、英語能力指数などが使われている。単なる人気投票ではなく、複数の客観データを組み合わせた評価という点が特徴だ。
医療と保険で満点級、タイの強み
タイが高得点を得た最大の理由は医療である。バンコクやチェンマイ、プーケットには国際的に評価の高い私立病院がそろい、欧米に比べて費用がはるかに安い。指数でも医療の質は20点中18点と高く、スペインやフランスと並ぶトップクラスに位置づけられた。健康保険の要件にいたっては20点満点をつけている。
項目別のスコアを見ると、タイの強みと弱みがはっきり分かれているのが分かる。
| 項目 | タイのスコア |
|---|---|
| 健康保険の要件 | 20 / 20 |
| 医療の質 | 18 / 20 |
| 生活費 | 16 / 20 |
| ビザの取りやすさ | 15 / 20 |
| コミュニティへのなじみやすさ | 8 / 20 |
「なじみにくさ」8点という弱点
一方で、移住者がタイ社会にどれだけ溶け込めるかを測る「コミュニティへのなじみやすさ」は、20点中8点と振るわなかった。タイ語の習得が難しく、現地の人との深い交流や日常の手続きで言葉の壁にぶつかりやすいことが背景にある。
医療や物価で上位に入っても、暮らしのなかで孤立しやすいという指摘は、移住を考える人がそのまま受け止めておきたい現実だろう。5項目すべてでバランスよく得点して首位に立ったフィリピンとは対照的に、タイは「医療は世界トップ級、でもなじむのは大変」という濃淡のある国として評価された。
リタイアビザと生活費のリアル
指数の解説によると、タイの代表的なリタイアメントビザ(ノンイミグラントO-A)を取得するには、タイの銀行口座に80万バーツ(約391万円)の預金があるか、月6万5,000バーツ(約32万円)以上の収入を示す必要がある。O-Aではさらに、年間10万米ドル以上を補償する医療保険への加入が求められ、有効期間は1年で毎年更新する仕組みだ。
生活費の目安は月3万6,000〜7万2,000バーツ(約18万〜35万円)。バンコクは高めだが、ある英国人退職者はプールやジム付きコンドミニアムの家賃や食費を含めて、月3万5,000〜4万5,000バーツ(約17万〜22万円)で暮らしているという。為替次第ではあるが、日本の年金収入でも十分に視野に入る水準といえる。
ランキングはあくまで一保険会社が設けた指標であり、実際の住み心地は人それぞれだ。それでも、医療と費用で世界トップ級という評価は、タイが長くロングステイ先の定番であり続けてきた理由を、改めて数字で裏付けている。
