タイ中部ナコンラチャシマ県で6月15日夜、カオヤイ国立公園から出てきた大きな野生ゾウが警察署の敷地に入り込み、サッカーをしていた警察官たちが一目散に逃げ出す騒ぎがあった。ゾウは「プラーイ・ドゥアン」と呼ばれる地元でも知られた一頭。署員にけがはなく、ゾウもやがて裏の森へと帰っていった。
署長もダッシュ、ゾウは堂々と
事件が起きたのは午後8時半ごろ、パークチョン郡のムーシー警察署。署長のチューキアット・ケーオアート警視正が署員たちと署前のサッカー場で運動していたところ、道沿いに大きな野生ゾウが現れた。サッカー場をかすめるように歩いてくるゾウに、警視正も署員も慌てて距離を取った。
ゾウはそのまま署の正面から、警察官の官舎エリアへと侵入。署員らは遠巻きに見守るしかなかった。幸い、ゾウは何かを壊したり人を傷つけたりすることはなく、しばらくして裏手の森へと戻っていったという。
常連は「プラーイ」の名を持つ巨象たち
署長によると、野生ゾウが署に入ってきたのはこれで3回目。しかも来るのは一頭ではなく、「プラーイ・ビアンレック」「プラーイ・クラエ」「プラーイ・ドゥアン」など、複数の大きなオスゾウが入れ替わり現れるという。タイ語で「プラーイ」は牙のある成獣のオスゾウを指す呼び名で、地元では一頭ずつ名前で呼ばれるほど身近な存在になっている。
ムーシー警察署は、カオヤイ国立公園の境界からわずか7〜8キロ。ゾウたちは夜になると、餌を求めて公園の外へと出てくる。豊かな自然と人の暮らしが隣り合うこの地域では、ゾウとの遭遇は珍しいことではない。
「世界遺産」の隣で続く共存の課題
カオヤイはタイ初の国立公園であり、ユネスコの世界自然遺産にも登録された豊かな森だ。一方で、ゾウが道路や民家、農地に出てくる「人とゾウのあつれき」は、周辺地域で長年の課題になっている。エサや生息域をめぐり、ゾウが集落に下りてくるケースは各地で報告されている。
今回は笑い話で済んだが、野生のゾウは体重数トンに及ぶ巨大な動物で、興奮すれば人の命に関わる。ドライブや観光でカオヤイ周辺を訪れる際は、特に夜間の道路で、ゾウの飛び出しに十分な注意が必要だ。
