チュラポーン王女クロマプラ・スリサヴァンガーヴァダーナーが5月12日、自身の69歳誕生日(7月4日)を記念した「69周年記念抗がん剤プロジェクト」として、標的型抗がん剤69万錠をタイ国民健康保障局(NHSO)に寄贈した。これによりユニバーサルヘルスケアスキーム(30バーツ医療制度)を通じて全国のがん患者に配布される。
国産抗がん剤の開発が背景に
チュラポーン王女は化学者でもあり、Chulabhorn Royal AcademyとChulabhorn Research Instituteを通じて長年がん治療研究をリードしてきた。1957年生まれ、マハー・ヴァチラ国王の妹で、チュラロンコン大学で化学博士号を取得し、東京大学や米国大学院での研究歴を持つ。有機化学・天然物化学・医薬品化学を専門とし、UNESCO科学賞をはじめ国際的な学術賞を受賞している。
今回の寄贈薬剤には、2025年5月にタイ食品医薬品局(FDA)承認を受けた国産標的型抗がん剤「IMCRANIB 100」が含まれる。東南アジア初とされるこの国産薬は、海外輸入薬の半額以下のコストで提供でき、患者の経済的負担を大幅に軽減する。
タイ初の国産乳がん薬「HERDARA」も承認
同じく2025年5月20日に承認された乳がん薬「HERDARA」は、ロシュ社製トラスツズマブ(Herceptin)の国産版だ。従来は1コース約100万バーツ(約460万円)かかっていた高額治療薬で、国産化によってユニバーサルヘルスケアの対象に組み込まれ、数千人規模のタイ女性がん患者が恩恵を受けると見られている。
30バーツ医療制度の枠組みで全国へ
NHSOが運営する30バーツ医療制度は2002年に導入され、国民約7,000万人をカバーする。年間予算は約2,000億バーツで、外来・入院・手術・薬剤を広くカバーし、世界的なユニバーサルヘルスケアの成功事例として評価が高い。チュラポーン王女の69万錠寄贈は、このシステムを通じて全国のがん患者に届けられる。タイのがん新規患者数は年間約14万人、死亡数は約8万人で、従来は抗がん剤の約95%を輸入に頼ってきた。



