バンコク・モーターショー2026(第47回)の最終予約台数が確定した。14日間の総予約は132,951台。前年の77,379台から55,572台増、71.8%の大幅増となった。
ブランド別ランキング — BYD首位、トヨタが2位で踏ん張る
| 順位 | ブランド | 2026年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | BYD | 17,354 | 9,819 | +77% |
| 2 | トヨタ | 15,750 | 9,615 | +64% |
| 3 | OMODA & JAECOO | 15,088 | — | 新規 |
| 4 | MG | 10,537 | — | — |
| 5 | CHANGAN(DEEPAL/NEVO) | 8,573 | 6,067* | +41% |
| 6 | GEELY | 7,811 | — | — |
| 7 | CHERY | 7,509 | — | — |
| 8 | GWM | 6,819 | 4,959 | +37% |
| 9 | GAC(AION/HYPTEC) | 6,287 | 7,018 | -10% |
| 10 | ホンダ | 5,907 | 5,948 | -1% |
| 11 | マツダ | 4,889 | — | — |
| 12 | 三菱 | 4,178 | — | — |
| 13 | いすゞ | 3,568 | — | — |
*2025年はDEEPAL単独の数字
2025年はBYDが9,819台でトヨタ(9,615台)を僅差で抜いて初の首位だった。2026年はその差が1,600台に広がった。一方でトヨタも64%増の15,750台と大幅に伸ばしており、単純に「日本勢が負けた」とは言えない。全体のパイが71.8%拡大した中で、トヨタはしっかりシェアを維持している。
グループ別で見ると景色が変わる
中国メーカーは1つの親会社が複数のサブブランドを展開する「多ブランド戦略」を取っている。グループ単位で集計すると順位が入れ替わる。
| グループ | 合計 | 構成 |
|---|---|---|
| 1. CHERYグループ | 22,597 | CHERY + OMODA + JAECOO |
| 2. BYDグループ | 18,057 | BYD + DENZA |
| 3. トヨタグループ | 15,891 | トヨタ + レクサス |
| 4. GEELYグループ | 12,719 | GEELY + ZEEKR + RIDDARA |
| 5. SAICグループ | 10,831 | MG + IM + MAXUS |
| 6. CHANGANグループ | 10,008 | CHANGAN + DEEPAL + AVATR + NEVO |
CHERYグループが22,597台で全体首位。OMODA & JAECOOという2年前には無名だったブランドが15,088台を叩き出したのが大きい。BYDグループが2位、トヨタグループが3位で日本勢最上位。グループ4〜6位は中国勢が占める。
ただし「中国勢が圧倒」という表現には注意が必要だ。トヨタは単独ブランドで15,750台を売っており、これはGEELYグループ全体(12,719台)やCHANGANグループ全体(10,008台)より多い。中国勢の強みは「数で攻める」戦略にある。
日本勢の現在地 — 撤退と反撃
数字の裏で、日本メーカーのタイ戦略は二極化している。
撤退側では、スバルがバンコク工場を閉鎖、スズキもラヨーン工場の閉鎖を発表。ホンダは生産能力を半減させ、日産はタイ国内2工場のうち1つを閉じた。中国EVの価格攻勢に耐えられない構造だ。ACFTA(ASEAN中国自由貿易協定)による関税ゼロと、タイ政府のEV補助金が、中国勢に7〜50%の価格優位を与えている。
一方で反撃の動きもある。トヨタはタイ製造の電動ハイラックス「Travo EV」を2026年に発売開始した。BYDのSharkに対抗するピックアップEVで、タイから東南アジア・マレーシアへの輸出も始まっている。トヨタは2027年までに世界で10車種のEVを投入する計画で、タイを東南アジアのEV生産拠点に位置づけている。
マツダは初のEV「6e」が今回のモーターショーで3,062台を記録し、EV戦略の第一歩を踏み出した。いすゞとトヨタ・ホンダはハイブリッドとEVの二刀流でタイ市場に残る戦略だ。
132,951台が示すもの
前年比71.8%増は異常な数字だ。景気回復だけでは説明がつかない。ディーゼルが50バーツを突破する燃料危機が、「次の車はEV」という判断を一気に後押しした。予約の約60%がBEVという数字がそれを裏付ける。
テスラは予約台数を非公表。欧州勢ではメルセデス・ベンツが2,111台、BMW1,001台と控えめだった。
タイの自動車市場は「日本車の牙城」から「中国EVとの共存」へ移行している。ただし日本勢が完全に退場したわけではない。トヨタの15,750台は、この市場にまだ戦う余地があることを示している。問題は、その余地がいつまで続くかだ。

