パタヤ近郊で4月5日夜、バイクごと貯水池に転落した50歳の男性が「女性と子供も一緒に乗っていた」と訴え、救助隊が大がかりな捜索を行った。だが現場には誰の姿もなかった。
事故の経緯
午後9時36分、チョンブリ県バンラムン郡ファイヤイ区のチャクノーク貯水池脇の道路で通報があった。パタヤの救助ボランティア「サワンボリブーンタムサターン」が駆けつけると、紫色のホンダ・ウェーブ100が道路脇から貯水池に転落しており、運転していたグンチョンさん(50歳、仮名)が全身に擦り傷を負っていた。
問題はここからだ。グンチョンさんは「後ろに女性と女の子が乗っていて、道中ずっと話していた。事故の後、2人がどこに行ったか分からない」と平然と語った。救助隊員10人以上が即座に現場周辺をくまなく捜索したが、他にけが人や溺れた形跡はどこにも見当たらなかった。
カラオケバーからの帰り道
グンチョンさんの説明によると、仕事を終えた後にファイヤイ地区のカラオケバーで友人3人と酒を飲み、その帰り道だったという。飲酒の影響で幻覚を見ていた可能性が高いが、救助隊は万が一に備えて捜索を続けた。
タイでは飲酒運転による事故が後を絶たない。世界保健機関(WHO)の統計でタイの交通事故死亡率は世界でも上位に入り、特にバイク事故は深刻だ。今回は幸い軽傷で済んだが、貯水池への転落で命を落とすケースも少なくない。
「見えない同乗者」の話は、タイのSNSでたちまち拡散された。心霊現象かただの泥酔かはさておき、深夜のバイク飲酒運転がどれほど危険かを皮肉な形で示した事件である。
タイの飲酒運転問題
タイ交通安全センターの統計では、交通事故死者の約30〜40%がアルコールに関連しているとされる。特にソンクラーン、正月などの祝祭期間は急増する。2024年のソンクラーン7日間では3,000件以上の事故が記録された。
チョンブリ県はパタヤを抱える観光地であり、夜間のバイク飲酒運転は慢性的な問題だ。カラオケバーやバーが密集するパタヤ周辺では、深夜帰宅のバイク事故が繰り返される。グンチョンさんは今回、軽傷で済んだが、同様のパターンで命を落とした例は数多い。
タイ政府は飲酒検問の強化と飲酒運転への厳罰化を進めているが、地方の夜間取り締まりは依然として手薄な地域も多い。今回の事件は、飲酒後に「誰かが一緒にいた」という記憶まで作り出すほどの泥酔状態がいかに危険かを改めて示した。
タイの貯水池事故の危険性
タイ東部チョンブリ県には農業用・工業用の貯水池が多く点在する。道路脇に貯水池が接している区間は珍しくなく、夜間の視認性が低い条件では転落事故が起きやすい。深夜の単独バイク走行では、転落しても発見が遅れるケースも多い。
今回グンチョンさんが転落した「チャクノーク貯水池」も、バンラムン郡の農業地帯に位置する。道路の端と水面の距離が近く、ガードレールが十分でない区間での事故だった。救助隊が迅速に対応し軽傷で済んだことは、不幸中の幸いだった。