ホンダのタイ法人が「City」の値下げ攻勢を仕掛けてきた。Thairathの自動車面が5月19日に報じたところでは、ターボモデルが最大8万5,000バーツ(約39万円相当)引き、e:HEV(ハイブリッド)が6万5,000バーツ(約30万円相当)引き。キャンペーン名は「ドキドキプロモ・価格固定」と訳せそうな響きで、要は「もう待てない」というメーカー側の本音が漏れているように見える。
引っかかったのは、値下げ幅の振り切り方だ。e:HEVの標準価格が72万9,000〜82万9,000バーツで、キャンペーン後は66万4,000〜73万4,000バーツに下がる。日本円換算で約300万円台のセダン・ハッチバックの値引き幅としては、なかなか目を引く水準ではある。
「City」がここまで攻める理由
タイの中位価格帯(60〜80万バーツ前後)には、いま中国勢が次々と入ってきている。BYD、MG、GWM、Aion、Neta、Zeekrといったブランドが、航続距離・装備・補助金(タイ政府のEV補助15万バーツ)を武器に、これまで日本車が握ってきた価格帯に並んだ。
新車販売の中でEVの占める比率はすでに2026年第1四半期で20%超に達しているとされ、エコカー・ハイブリッドの定番市場が、思いのほか早く侵食されている。Cityの値下げは、その流れに対する正面からの応答である。ハイブリッドの強みを「もう少し安く」差し出して、買い替えを迷っている層を引き戻したい、という意図だろう。
セダンとハッチバックの両方が対象で、対象モデルはターボとe:HEVに分かれる。ターボは1.0L VTECターボ、e:HEVは1.5L i-MMDハイブリッドの組み合わせ。終了日は明示されておらず、ディーラー網全体での適用と読める。
タイの自動車市場、いま起きていること
同じThairathの記事には、Hyundaiも「Staria Premium」を40万+7万バーツ引き下げという別件があって、つまりこの数か月、日系・韓国系の在来勢が一斉に価格で攻めに転じている空気がある。
ホンダ単体の動きに見えるけれど、背景には日系メーカーが「ハイブリッド優先」で築いてきた市場の地盤が、想定より早く揺らいでいる事情がある。中国EV勢は補助金の追い風と、大画面ディスプレイ・運転支援といった「触ったときの新しさ」で、若い世代の買い手を惹きつけているらしい。
CityはタイのGrabやBoltの車両としてもよく走っているし、日系企業の社用車として馴染みも深い。値引き原資をここまで積み上げてきたあたりに、ホンダ側の危機感が透けて見えるとも言える。
どこまで広がるか
気になるのは、これがCityだけで終わるのか、ということだ。HR-V、CR-V、Civicといった他のホンダ車に同様の値引きが及ぶのか、あるいはトヨタや三菱がどう応じるのか。「価格固定」の名前を冠している以上、価格を据え置きながら値引き額で勝負する戦略を当面続けるつもりらしい。
ハイブリッド対EVの構図は、これから1〜2年で勝負がつくと言われてきた領域でもある。今回の値下げが、ホンダがその局面に「もう一段攻める」と決めた合図に見えるのは、たぶん私だけではない。続報は同じ価格帯のトヨタ・三菱の対応で読めるはずだ。