タイの自動車・部品関連10協会が5月14日、政府に対して「自動車工業の基盤を守るための緊急政策」を求める共同声明を発表した。EV(電気自動車)への移行で中国メーカーの低価格攻勢が強まり、タイ国内の生産基盤と関連サプライチェーンが崩壊しかねないとの危機感が背景にある。タイの自動車工業は外貨獲得・雇用・関連産業を支える経済の柱で、共同声明は政府に対して国内事業者保護への明確な政策誘導を要求している。Autolife Thailandが詳細を伝えた。
EVAT中心、自動車・部品10協会が連名
共同声明に署名したのは、タイ電気自動車協会(EVAT)のスロート・センサニット会長を筆頭に、タイ自動車部品製造業者協会(TAPMA)のソンポン・タナダムロンサック会長、タイ製造受託促進協会(THAI SUBCON)のチャニン・カウチャン会長、タイプリント基板協会(THPCA)のポーンピシット・ニティスーパンナラット理事、タイ自動化・ロボティクス事業者協会(TARA)のチャチャイ・ポンモル副会長、タイコンポジット協会(TCA)のオーンノン・チャイイェン会長、タイ金型工業協会(TDIA)のヴィルジ・シリタナサート会長、タイ組み込みシステム協会(TESA)のヴィルン・シーボリーラック会長、タイエネルギー貯蔵技術協会(TESTA)のナッタナイ・クナーヌソン副会長、タイ金属鋳造工業協会(TFA)のニティーポーム・ポンクリャンユー副会長の10人だ。
EV移行で「生産基盤喪失」のリスク警告
10協会の共同見解として打ち出されたのは、「タイの自動車工業が現在、EVへの移行で過去最大の危機にある」というメッセージだ。中国メーカー主導のEVが低価格で大量参入する流れの中、伝統的なエンジン車・部品の生産基盤がタイから流出するリスクが高まっている。生産拠点が失われれば、サプライチェーンの川下企業(部品メーカー、金型業者、ハーネス・基板メーカー等)が連鎖的に縮小し、雇用と関連投資にも波及する構図だ。
経済の柱としての自動車工業
タイの自動車工業は、年間生産台数が約180-200万台規模で、ピックアップトラックと小型乗用車を中心に、ASEANの製造ハブとしての地位を占めてきた。トヨタ、いすゞ、ホンダ、三菱、日産、マツダなど日本ブランドが主力で、関連部品の二次・三次サプライヤーも数千社単位で存在する。10協会の連名は、業界の幅広い層が同じ危機感を共有していることを示している。
政府への要請内容と「Smart & Green Mobility」議論
並行して、タイ投資委員会(BOI)が中国・日本・欧州のEVメーカーと連携を進める「Smart & Green Mobility」政策を打ち出しており、政府としてはEV化を後退させる方針はとっていない。10協会の声明は、EV化そのものの否定ではなく、「移行のスピードと方式」「中国メーカーの『ゼロ補助金参入』に対する保護措置」「国内サプライヤーへの転換支援」を求める内容と読み取れる。政府がどう政策バランスを取るかが今後の焦点だ。
関連背景
タイで日系自動車メーカーや一次・二次サプライヤーに勤務する駐在員にとって、今回の10協会声明は他人事ではない。トヨタ・ホンダ・いすゞ・三菱・日産・マツダなどの工場・関連企業の戦略判断、現地パートナーシップ、生産品目の構成変更、人員配置のリバランスなどが、今後数年間で連動して動く可能性が高い。声明の続報と政府の応答に注目したい。





