タイ財務省が5月12日、自動車業界の景気刺激策として検討していた「古車交換新車2569プログラム(รถเก่าแลกรถใหม่ 2569)」を当面停止すると発表した。理由は中古車の公正な評価基準の設定が技術的に困難なことと、リサイクルや部品分離を担う統合的な廃車処理インフラが不足していることの2点だ。財務省は国税局(สรรพากร)に「より適切な措置」の提案を急ぐよう指示した。アヌティン首相政権の4,000億バーツ借入勅令(PRD)から100〜200億バーツ規模の財源を見込んでいたとされる大規模プログラムが、実施直前で棚上げとなった形だ。
評価基準と廃車インフラという2つの壁
中古車の状態は車種・年式・走行距離・保守状況によって大きく異なり、全国共通の「買い取り価格基準」を設けることが難しい。地域や販売店によっても価格差が生まれやすく、所有者・行政・補助対象企業の利害が対立しやすい。廃車処理の面では、鉄・アルミ・プラスチック・電子部品などを分離する専門設備と、バッテリーや冷媒など有害物質の適切な処理システムが国内で整っていない。米国が2009年に実施した「Cash for Clunkers」や日本の「エコカー補助金」と比べると、タイの廃車処理インフラは根本的な整備が先決とみられている。
代替策と自動車業界への影響
代替案としては、既存の「EV3.5」プログラム強化や運輸業者EV化支援(別途200億バーツが検討中)、ローン金利補助などが議論されている。タイの新車販売台数は2026年第1四半期に約20万台で、コロナ前2019年の年間約105万台からの回復途上にある。トヨタ・ホンダ・日産・三菱・いすゞなど日系メーカーにとっては販売計画の見直しを迫られる決定だ。財務省は2026年第3四半期以降の再検討も示唆しており、廃車処理インフラへの先行投資が再開の条件になるとみられる。



