タイ電気自動車協会(EVAT)のスロート・センサニット会長が5月14日、「タイのEV補助金制度『EV 3.5』が2027年で終了した後、自動車メーカーがタイから撤退する可能性がある」と強い警告を発した。すでに各メーカーが中国からの完成EV(CBU)を税率0%で輸入する戦略に移行しており、タイ国内製造と部品サプライチェーンが崩壊しかねない、というのが10協会連名で政府に提出された緊急政策の核心だ。Autolife Thailandが詳細を伝えた。在タイ日本人の駐在員、特に日系自動車メーカー・部品サプライヤー関連の人物にとっては、勤務先の存続にも関わる重大なニュースだ。
EV 3.5補助金の出口戦略がない
タイ政府は2024-2027年にかけて「EV 3.5」と呼ばれる電気自動車普及補助金制度を運用してきた。EV購入者には1台あたり数万バーツの補助、メーカーにはタイ国内生産義務とセットで税率優遇を提供する仕組みだ。問題は、この制度が2027年に終了した後の出口戦略が不明確な点にある。EVAT会長は「終了後は国内生産義務もなくなる、補助金もなくなる、メーカーが中国からCBU(完成車)を税率0%で輸入し続ける可能性が高い」と警告する。
中国製EVの「税率0% CBU」シフトが進行中
すでに大手自動車メーカーは戦略を見直し、タイ国内製造を縮小して中国からのCBU輸入に移行している兆候が見える。中国製EVは規模の経済で価格優位性が高く、税率0%が適用されればタイ国内製造より圧倒的に安い。結果として、タイ国内の部品メーカー(一次・二次・三次サプライヤー)が大量に受注を失い、サプライチェーンそのものが崩壊するリスクが顕在化している。
タイ自動車工業はGDPの約10%
タイの自動車工業はGDPの約10%を占める経済の柱。トヨタ、ホンダ、いすゞ、三菱、日産、マツダ、スズキなど日本ブランドが主力で、ピックアップトラックと小型乗用車を中心にASEANの製造ハブとして機能してきた。一次部品メーカーだけで数百社、二次・三次まで含めると数千社規模の関連企業が存在する。EVAT会長の警告は、この基幹産業の構造的崩壊リスクを率直に示すものだ。
10協会が「8つの緊急政策提案」を首相に要請
EVATを筆頭にタイ自動車部品製造業者協会(TAPMA)、タイ製造受託促進協会(THAI SUBCON)など10協会が連名で、政府に緊急8項目の政策提案を提出している。その骨子は「タイは安いEV消費市場として終わるのか、世界に通用する生産基盤を維持するのか」を政府に明確に選択させる、というものだ。10協会は首相アヌティン・チャンウィラクン氏との直接面会を要請しており、対応の遅れは許されないとの認識を示している。
関連背景
タイで日系自動車メーカー・部品サプライヤー・関連物流に勤務する駐在員にとって、今回のEVAT警告は他人事ではない。勤務先の戦略判断、現地生産か撤退か、人員配置の見直し、現地パートナーシップの再編などが、今後数年間で連動して動く可能性が高い。日本商工会議所・JETROなどの公式コメントを併せて確認し、自社の事業継続計画の中で「EV 3.5終了2027年」をマイルストーンとして組み込む必要が現実的だ。





