3月のホルムズ海峡封鎖期間に起きたタイの燃料不足を巡り、タイのエネルギー事業局(กรมธุรกิจพลังงาน)が5月19日、全国の6つの製油所に対して「販売遅延・備蓄工作(ประวิงเวลา-กักตุนน้ำมัน)」の容疑で立件することを発表した。あわせて、現時点で「政治家の関与は確認されていない」とコメントしている。
この件は前日5月18日にも大きく動いていた。合同会見では、本来市場に出るはずだったタンカー輸送23便分、約5,080万リットルと、トラック輸送662便分、約210万リットルが業者の手元に「眠っていた」ことが示され、市場から消えていた燃料は2,920万リットル相当との数字が出ていた。さらに同日夕方には、アンソートン県の燃料倉庫から偽装燃料が見つかり、3,000億バーツ規模の資金が動いていたことも発覚していた。
そこからわずか1日で、捜査対象が「特定業者」から「全国6製油所」に広がった形だ。今回の発表で具体的にどの製油所なのか、規模感がどの程度なのかは捜査機密として明かされていないが、ホルムズ海峡封鎖を受けた数日間に、一企業ではなく複数の精製拠点が並行して同じような動きをしていた、と当局が判断している点はかなり重い。
引っかかるのは「政治家関与は未発見」という一文だ。経済事件としてのスタンスを取りながら、同時に資金洗浄ルート(マネーロンダリング)の追加捜査が続いている、という構図は、現時点で「政治家は出てこない、けれど資金の流れ自体はまだ追っている」という言い方に近い。この一文だけで終わる話なのか、それとも追加で何か出てくるのかは、続報を待つしかない。
燃料市場の関係者にとっては、立件が広がるほど短期的な供給不安は再燃しやすい。一方で、構造的に何が起きていたのかが明らかになる過程でもある。3月のあの数日間、ガソリンスタンドに並んだあの感じが「業者の調整」によって増幅された可能性が高まったという意味で、生活実感のある事件として読みたいニュースだ。



