タイ司法省・エネルギー省・警察庁・DSI(特別捜査局)の合同捜査チームが5月18日、警察庁で記者会見を開き、3月のディーゼル危機をめぐる人為的工作スキャンダルの続報を公表した。
会見に並んだのは、ルッタポン・ナオワラット警察中将(司法大臣)、エカナット・プロームパン氏(エネルギー大臣)、タッチャイ・ピータニーラブット警察庁副長官(燃料関連犯罪対策センター ศปนม. 長)、ユタナ・プレダム警視(DSI局長)、それに物品税局・エネルギー事業局・国内貿易局という顔ぶれだ。
調べが進んだのは、「第7条石油業者」のうち自社ガソリンスタンドを抱える一部の業者が、自社スタンドへの燃料供給をわざと遅らせて備蓄し、価格上昇を待って投機的に売却していたという行為。3月のホルムズ海峡をめぐる中東情勢の緊張で原油価格がじりじり上がっていた最中、タイ国内ではディーゼルがガクッと不足し、各地で行列と配送遅延が起きた、あの混乱の裏側だ。
備蓄に回されていた燃料は5,200万リットル。タンカー船23便分に加えてトラック輸送が交ざる量で、第7条業者のうち「一部」と言うにはずいぶん大きな数字だ。
続報のもう1つの核は、中部アンソートン県の燃料倉庫だ。捜査によると、ここで燃料の混合・希釈などの「偽装」が見つかり、倉庫を介した資金循環が30億バーツ(3พันล้านบาท、約138億円)規模だったと報告された。要は、市場から消えた燃料の隠し場所であり、価格が上がるのを待って吐き出す投機の踊り場であり、混ぜ物燃料の出口でもあった、ということになる。
引っかかったのは、これがタイの巨大エネルギー会社や中堅独立系という違いを超えて、「自社スタンド付き第7条業者」という共通点で起きていた点だ。供給と販売を1本でつないでいる業者は、出荷の蛇口を自分で締められる。これを使われると、市場には「単純に油がない」としか見えない。3月のあの行列の正体は、世界情勢のせいだけではなく、その蛇口の操作だったわけだ。
立件される罪状は、価格商品サービス法1999年第30条の「販売遅延行為」(懲役7年以下、罰金14万バーツ以下)を軸に、石油燃料事業法、刑法詐欺罪、租税法違反などを重ね、状況によってはマネーロンダリング法や独占禁止法も視野に入る、と説明されている。
捜査は5月後半に主犯・関連業者の逮捕と起訴、6月以降にアンソートン倉庫を含めた資金循環の追跡完了と財産凍結・没収、という順番で進む見通しだ。ディーゼルが手に入らずバンコクの幹線が殺気立っていたあの3月から2か月。やっと「誰がやったのか」の輪郭が見えてきた、そんな続報である。



