アヌティン・チャーンヴィーラクン首相兼内務大臣が5月12日、麻薬抑制警察本部(PCBP)での会見で、中国人ミンチェン・サン容疑者について「テロリストではなく普通の人に見える」と述べた。同時に、2026年9月に銃携帯許可(ใบพกปืน)を一律廃止する方針を初めて表明し、タイの銃所有問題への本格的な政策転換を打ち出した。
首相の発言:3つの柱
アヌティン首相の発言は大きく3点にまとめられる。ミンチェン容疑者を「テロリストではない」と評価したこと、警察の捜査を全面的に支持すること、そして2026年9月の銃携帯許可廃止という政策転換だ。個別事件への対応と構造的な銃規制改革を同時に提示する形となった。
ミンチェン・サン容疑者は兵器・爆発物・国家安全保障関連の犯罪容疑で捜査中で、M4ライフルや弾薬を含む武器の密蔵が判明している。民間人3人と軍人2人が武器流通に関与し、東南アジアの国際詐欺グループ幹部との関係も浮上している。その状況下で首相が「普通の人」と評したのは、捜査中で確定情報がない段階での個人的見解と捉えられている。(関連記事:国家諜報局長「ミンチェン氏は近隣国詐欺グループ幹部と関係」公式認知)
カンボジアとの外交的立場
カンボジア政府は東南アジア犯罪組織(BHQ)との関係を否定している。アヌティン首相は「捜査からの情報のみに依拠する」と述べ、外交的調整は不要との立場を示した。タイ・カンボジアの外交関係は微妙なため、強硬な姿勢を保ちつつ外交対立を避ける構えと読める。
9月の銃携帯許可廃止が意味するもの
タイの合法銃ライセンス保有者は約450万人で、銃所有率は東南アジアで最も高い。違法銃の流通も数百万丁に上るとされ、銃事故・銃犯罪が年間多発している。9月の許可廃止が実施されれば、シンガポールや韓国型の厳格規制モデルへの転換を意味する。
ただし施行に向けた課題も多い。既存ライセンス保有者450万人の取り扱い、民間警備会社や貴金属業者などの例外規定、違反者の罰則体系、移行期間の設定など、詳細な運用ガイドラインの公表が求められる。
