ノンタブリー県サイノーイ郡の市場で、米のおかずを売る68歳の屋台のおばちゃん(仮名ノーイ)が、隣で商売をしてきた「有名な教祖」と呼ばれる男から「呪いの鞭(แส้อาคม)」で打たれた。事件は5月3日の朝に起きたが、5月12日に記者が自宅を訪ねた時点でも、両腕には青黒いあざがびっしりと残り、裂傷が2か所、肩・首の後ろ・頭にも腫れが見えたという。
ノーイさんは、痛みで店に立てず収入が途絶えてしまった、と訴えている。すでにタイノーイ警察署に被害届は出した。「米のおかずを売っているだけなのに、なぜこんな目に」とこぼす言葉が重い。
引っかかったのは、2人が10年以上にわたって隣り合わせで商売してきたという事実だ。長年の口論が溜まりに溜まって、ある朝ついに鞭が出た。客の取り合いなのか、縄張りなのか、原文では詳細まで踏み込んでいないが、10年というのは並の関係ではない。
「แส้อาคม」というのは、タイの民間信仰のなかで特別な力が宿るとされる道具で、修行を積んだ「เกจิ(ゲージ)」と呼ばれる人が使うとされる。打たれた相手は身体だけでなく精神も病む、と信じる人もいる。今回の加害者はサイノーイ郡で名の知られた教祖で、弟子や信者を抱える人物らしい。寺の敷地でも商売をしていたという。
身体の傷は10日経っても塞がらない。それに加えて「呪いをかけられた」という不安が頭から離れないとなれば、被害者の負担は二重になる。タイでは仏教と土着の信仰が地続きで、こういう力を持つとされる人物に逆らうこと自体が怖い、という人も少なくない。
寺側はとりあえず双方に商売を止めるよう伝えたという。警察の捜査が進めば、暴行ないし傷害で立件される流れになりそうだ。
教祖と呼ばれる存在が、信者を救うはずの力を隣のおばちゃんに振るう。その絵面は、信仰の国タイでもさすがに違和感しか残らない。
