タイ政府が、日本で2027年4月に始まる新しい外国人就労制度をめぐり、日本側から最初の協定国に指名された。労働省のジュラポン・アモンウィワット相が6月2日、日本との協力覚書(MOC)案を閣議に諮ったと明らかにした。技能実習制度に代わる新制度のもとでも、タイ人労働者が引き続き日本で働ける道を確保する狙いがある。現在も2万人を超えるタイ人が日本で働いており、両国の労働分野の結びつきは一段と深まることになる。
タイが日本の新制度「育成就労」で初の協定国に
ジュラポン労働相によると、日本が提案したのは「技能開発のための雇用(Employment for Skill Development、ESD)」と呼ばれる新制度に対応する協力覚書である。日本語では育成就労制度と呼ばれ、2027年4月1日から、これまでの技能実習制度(TITP)に代わって運用が始まる。
とりわけ注目されるのは、日本政府がこの覚書の署名国としてタイを最初に選んだ点である。ジュラポン氏は「タイ人労働者の能力と、タイの労働管理体制への強い信頼の表れだ」と述べた。新制度のもとでもタイ人が日本で働く窓口を確保できるだけでなく、より質の高い職に就く機会が広がるとしている。
技能実習から育成就労へ、何が変わるのか
日本が長く続けてきた技能実習制度は、国際貢献を名目としながら実態は人手不足の穴埋めに使われ、低賃金や劣悪な労働環境をめぐる批判が絶えなかった。これに代わる育成就労は、外国人労働者の技能を段階的に引き上げ、特定技能(SSW)と呼ばれる在留資格へと移行させることを目的としている。
育成就労が技能実習と大きく異なる点の一つが、一定の条件のもとで働く企業を変える「転籍」が認められることである。技能実習では原則として最初の受け入れ先に縛られ、待遇に不満があっても職場を移れないことが、失踪や人権侵害の温床になっていると指摘されてきた。新制度はこの反省を踏まえ、労働者の立場を一定程度守る仕組みを取り入れている。
対象となるのは、日本で人手不足が深刻な製造、建設、農業、介護などの分野である。急速な高齢化と労働力不足が続く日本にとって、こうした分野の担い手をどう確保するかは切実な課題であり、タイをはじめとする送り出し国との協力が欠かせない。
覚書が定める労働者の保護
今回の覚書には、労働者の権利保護、両国の関係機関による情報交換、不当な搾取の防止、協力状況の追跡と評価などが盛り込まれた。労働者の移動が適正かつ安全に行われ、双方の国に利益をもたらすようにする狙いがある。技能実習で繰り返された搾取の問題を踏まえ、制度の入り口で歯止めをかけようとする内容といえる。
日本で働くタイ人労働者の現状
タイの雇用局によると、直近5年間(2022〜2026年)で日本での就労を許可されたタイ人は3万7,323人に上り、このうち2万1,306人が現在も日本で働いている。日本での外国人雇用は、技能労働者、技能実習生、特定技能の3区分に分かれる。
タイ人に人気の職種は、食品製造、金属製造、一般作業員、技術・技能職、農業の5分野である。現在も海産加工、電子機器の組み立て、金属プレス、加工食品の製造、農業など、4,750人以上の求人がタイ人を待っているという。雇用局は、希望者は各県の雇用事務所や労働省のホットライン(1506の2番)で情報を得られるとしている。
育成就労を経た労働者は、試験などを通じて特定技能の資格へと進むことができる。特定技能のうち上位の区分では、家族の帯同や在留期間の更新が認められ、長期的に日本で働き、暮らす道も開ける。単なる出稼ぎにとどまらず、技能を積み重ねてキャリアを築ける制度設計になっている点が、これまでとの大きな違いである。