タイ陸軍の報道官ウィンタイ・スワーリー少将が2026年5月2日、ナコンラチャシマ県ポー・グラーン町テッサバンで発覚した中国人45件分の偽出生届事件(コラート偽出生届事件)について、出生地として悪用された「サナリ陸軍基地病院」の公式調査結果を発表した。同病院のデータベース照合で対象児童の出生記録は1件も存在せず、軍と病院は事件への関与を完全に否定した。
ウィンタイ報道官によれば、陸軍は事件報道を受けて即座に第2軍管区とサナリ陸軍基地病院がナコンラチャシマ県政府と緊密に連携し、関係する全方位の事実関係調査に着手した。病院は内部データベースで、ナコンラチャシマ県側から提示された対象児童名簿を1件ずつ照合した結果、いずれも病院での出生記録に該当しないことを確認したという。この結果から、悪用されたのは病院の名称のみで、医療機関側は犯罪に関与していないと結論付けられた。
陸軍はこの調査結果を関係官庁に正式通知し、警察・検察による犯罪者の特定と訴追に必要な情報・書類の提供を全面的に支援する方針を打ち出している。同時に、噂や未確認情報の拡散を控え、政府・軍の公式発表を待つよう市民とメディアに呼びかけた。
事件はナコンラチャシマ県ポー・グラーン町(メアン郡)の役場で、中国人45件分の偽出生届が登録されていたとして、町長キティポン・ポンスラウェット博士が4月末に告発したもの。出生証明書はタイ国籍取得への入口となるため、登録職員と外部組織が組んだ国籍詐取スキームと疑われる。同じ4月29日にはバンコク・トンブリ区でも100件超の偽出生証明発行で6人逮捕が公表されており、複数の自治体で同種の事件が同時並行で進行していた疑いが濃い。
今回の陸軍発表は、医療機関の名前を詐称することで「正規の出生証明書らしさ」を装う手口の一端を可視化した。出生届には病院長の署名・印章が必要となるため、犯罪組織は実在する病院名を借用して書類を偽造していたとみられる。タイ全土で公立病院・軍病院の名称が同様に流用されていないかの一斉点検が、保健省と内務省の課題となる。
在タイ日本人にとっても、出生届・婚姻届・相続関連書類の信頼性は在留生活の根幹に関わる。地方自治体登録業務の透明性向上と、医療機関の証明書発行の電子化・本人確認強化が、今回の事件を契機に進むかどうかが注目される。