タイ東北部ナコンラチャシマ県ポー・グラーン町の役場で、中国人を対象にした偽出生届の登録疑惑が当初の27件から45件に拡大したことが2026年5月1日に判明した。同町長のキティポン・ポンスラウェット博士は同日、ナコンラチャシマ警察署で正式に告発し、登録担当職員が1件あたり数万バーツの賄賂を受け取って書類を偽造していたと述べた。届出のうち6組が双子という不自然なパターンが指摘されている。
事件の発端はキティポン町長が役場の登録業務を点検したときの違和感だった。出生地として記載されたサナリ陸軍基地病院に確認を取ったところ、当該名簿の人物が同病院で出生した記録は存在しないことが判明。直後に追加で18件分が「偽装」と確定し、合計45件となった。届出の対象者はすべて中国人で、タイ国籍者は1人も含まれていない。
時期は2568年(西暦2025年)7月から10月に集中し、特に2568年6月にも異常な数の届出が記録されていた。双子の届出が6組という比率は、タイの一般的な多胎出生率(1〜2%程度)と比較して明らかに高い。出生証明書はタイで身分証申請、教育機関入学、不動産取得、銀行口座開設の起点となるため、偽造による国籍詐取は重大な犯罪である。
同様の事件は2026年4月29日にバンコク・トンブリ区職員が偽出生証明100件超を発行した疑いで6人が逮捕されたケースとして表面化している。コラートの45件と合わせると、複数の自治体で同種の偽装登録が同時並行で進行していた疑いが濃く、警察関係者からは「氷山の一角ではないか」との見方も出ている。
タイでは「ジーンタオ」と呼ばれる、中国本土から渡ってきて違法就労やオンラインギャンブル、詐欺ネットワークに関与する人物群が問題化している。タイ国籍を不正取得すれば不動産購入、企業設立、ビザ更新の手間が消え、犯罪収益の隠匿にも使える。地方役場の登録職員と組んだ偽出生届は、その入口を乗っ取る最短ルートとされる。
地方自治体の登録業務が組織的に乗っ取られていた疑いがあるという事実は、在住者にとっても無関係ではない。日本人を含む正規外国人の在留手続き、子供の出生届、不動産登記の信頼性に影響しかねず、今回のコラート告発が他県でも同様の点検を促すかが焦点になる。