2026年5月1日、4月30日にパトゥムターニー県クロンルアンで22歳のタマサート大学生が運転するBMWに追突されて亡くなったフードデリバリーライダー、アロンコーンさん(27)について、姉のキティマさん(30)が涙ながらにメディアに語った。亡き弟は両親と自分の息子を養う家族の大黒柱で、事故車のバイクは買ってまだ1ヶ月にも満たず、初回ローンの返済日すら来ていなかった。
姉によると、アロンコーンさんは朝早くから夜遅くまで配達の仕事を続け、両親とキティマさんの息子の生活費を支えていた。事故のバイクは仕事のために最近購入したばかりで、最初のローン支払いを迎える前に持ち主を失った形となる。
5年前の2563年(西暦2020年)にも、アロンコーンさんは別の交通事故に巻き込まれて脚を負傷し、長期療養を余儀なくされていた。回復後は再びライダーとして家族のために働き始め、ようやく新しいバイクを手にしたばかりの最中の悲劇だった。
事故現場近くのライダー詰所には、友人のペーロート(通称バンク、27)ら同僚が集まり、生前にアロンコーンさんが毎朝飲んでいたコーヒーやタバコを供えて追悼した。「弟は朝早く出て、酒も飲まない真面目な人だった」と友人は語る。仲間内ではフードデリバリーの待機場所だったため、彼の不在は同僚たちに強い喪失感を残した。
事件は4月30日未明に起きたBMWによる追突死亡事故で、加害者の22歳タマサート大学生は呼気アルコール濃度93mg%という法定基準1.86倍の高濃度で運転していた。事故直後の「私の車も壊れた」発言がSNSで炎上し大学声明が出され、その後飲酒運転を含む3罪状で正式立件されている。被害者家族側にはまだ加害者から10万バーツの賠償提示があるのみで、示談交渉は本格化していない。
今回の姉の証言は、タイ社会で繰り返し問題化される「ハイソ大学生対庶民労働者」という階級対比をさらに鮮明にした。フードデリバリーは2020年以降のコロナ禍で急増した職種で、月収数万バーツのライダーが家族を支える事例が多い。一方で1台数百万バーツのBMWに乗る22歳の大学生という対比は、SNSで「平等な司法の徹底」を求める声を一層大きくしている。
在住者の生活では、深夜・早朝に配達する数十万人のライダーが雨の日も気温40度の日も走り続けている。今回のように家計の大黒柱を一瞬で失う家族が出る現実は、配達アプリを日常的に使う側にも考えさせる事案だ。