2026年4月30日深夜にパトゥムターニー県クロンルアン郡クロンヌン町のコンドミニアム前で起きたタマサート大学生のBMW追突死亡事故が、5月1日になっても社会的炎上を続けている。容疑者の22歳男子学生は事故後の事情聴取を経て保釈されたが、警察は飲酒運転を含む正式な立件手続きに入った。事故時の呼気アルコール濃度は93mg%と、タイの法定基準50mg%の1.86倍に達する高濃度だった。
事故の被害者は27歳のフードデリバリー(ライダー)で、家族の大黒柱として働いていた。被害者の兄が涙を流しながら「弟が家計を支えていた」と訴える映像がSNS上で広がり、共感の輪が拡大している。容疑者の学生はタマサート大学傘下のSIIT(Sirindhorn International Institute of Technology/シリントン国際工科学院)に在籍する男子学生で、SNS上では「#เด็กSIITเมาแล้วขับ」(SIIT学生が酔って運転)というハッシュタグが5月1日にトレンド入りした。
炎上の引き金は、Facebookページ「เจ๊ม้อย v+」が公開した加害者側の発言とされる音声・テキスト。「なぜ騒ぐの、私の車も壊れたのに」という意味の発言が、人を轢き殺した側の感覚として完全に欠落していると受け止められ、社会的非難を浴びた。SNS上では「学生身分剥奪」「厳罰」「保釈取り消し」を求める投稿が殺到し、SIITおよびタマサート大学に対する声明・処分要求が一段と強まっている。
タマサート大学は前回の事件発生直後に「事故を遺憾とし、関係機関の捜査に協力する」とのコメントを発表していたが、今回のトレンド入りを受けて学生身分の処分判断を迫られる可能性が高い。SIITは英語授業の国際学院で、留学生・上流家庭の学生が多く、「ハイソ大学生の特権意識」がタイ社会で繰り返し問題化される構図と重なってしまった形だ。
タイの飲酒運転は刑法で「他人を死亡させた飲酒運転」が懲役3〜10年および罰金1〜20万バーツ、運転免許の取消しが定められている。今回のように呼気93mg%という高濃度の場合は重罰枠での起訴が見込まれ、加害者側の事故後の発言や弁護方針が今後の法廷で大きく不利に働く可能性が指摘されている。
在タイ日本人にとっても他人事ではない。夜間にバイク・原付・自転車で道路を走る場合、特にパトゥムターニーやランシットなど学生人口の多い郊外幹線では、深夜帯の若い運転手による高出力車に十分な注意が必要だ。逆にBMW・ベンツ・ポルシェなど高級車を運転する駐在員にとっても、飲酒運転による被害者の家族・社会から受ける反発は、現金示談や保釈金では収まらない領域に入っており、運転前のアルコール摂取が事業・家庭・在留資格すべてを失う可能性のある行為だと改めて意識させる事案だ。
ライダー業界からは、25万人を超えるフードデリバリー・配送ライダーの社会保険加入推進と、深夜時間帯の安全対策の強化が改めて求められている。タイ労働省は4月にライダー20万人の社会保険加入計画を公表しており、今回の事故被害者の家族補償が制度設計の現実的な試金石になる。