タイのパトゥムターニー県クロンルアン郡で2026年4月30日未明に発生したBMWによるフードデリバリー配達員追突死亡事件で、加害者の22歳学生プーミン氏が「私の車も壊れた(タイ語:รถหนูก็พัง/読み:ロット・ヌー・ゴ・パン)」と発言したことがSNSで炎上している。これを受けてプーミン氏が在籍するタマサート大学ランシットキャンパス(มธ.ศูนย์รังสิต)は「飲酒運転反対」の正式な立場声明を発表する事態となった。タイ社会の注目を集める事件として5月1日も継続報道されている。
事件は4月30日午前2時30分頃、パトゥムターニー県クロンルアン郡クロンヌン地区のコンドミニアム前バンカーン-チェンラック通りで発生。プーミン氏(22歳)が運転するBMWセダンが、レストランから帰途中だったフードデリバリー配達員アロンコーン氏(27歳)のHondaジョルノに後方から追突。アロンコーン氏は10メートル以上飛ばされ即死した。BMWはバンコクナンバー、Hondaジョルノはナンバープレートなしの状態だった。
事件直後の報道で、メディア対応を一切拒否したプーミン氏が警察への供述で「私の車も壊れた」と発言したと伝えられた。被害者が即死しているにもかかわらず加害者側が自分の車の損傷を口にしたことに対し、SNS(X、Facebook、TikTok)で「人の命を軽視している」「タマサート大学生の意識として恥ずかしい」「飲酒運転は厳罰化を」という批判が殺到。事件のハッシュタグ「#รถหนูก็พัง」が一時トレンド入りした。
タマサート大学ランシットキャンパスは公式声明で「本学はあらゆる形態の飲酒運転(เมาแล้วขับ)に断固反対する」「司法プロセスの透明性を求める」「学生のメンタル教育と社会的責任意識の養成を強化する」と発表。プーミン氏はSIIT(Sirindhorn International Institute of Technology)の学生と特定されており、大学側は事件を契機とした学生指導の見直しを示唆した。一部学生団体は加害者に対する大学の処分手続き開始を要求している。
在タイ日本人にとって、この事件はタイの「富裕層BMWドライバーvs庶民配達員」という階層対比、「タマサート大学生という社会的地位」、「飲酒運転処罰の不徹底」という3つの社会問題が交差する典型的なケースとして記憶される。タイの飲酒運転罰則は最大懲役1年・罰金1万〜2万バーツだが、人身事故による致死の場合は道交法+殺人未遂・過失致死で起訴され、最大10年の懲役が可能だ。ただ実際の量刑は被告の社会的地位や保釈金の支払い能力で大きく差が出るとされ、「BMW運転手は軽い処分で終わる」という社会不信が背景にある。被害者遺族と労働団体は「ライダーへの安全保障と、加害者への厳罰」を求めている。