タイ中部ナコンナヨック県バンナー郡のワット・クラダーンで6月9日、嵐によって樹齢100年を超えるヤーンナーの大木が倒れ、その木をねぐらにしていたオオコウモリ757匹が下敷きになって死んだ。負傷した47匹は当局の職員と獣医によって保護され、治療を受けている。
逃げ遅れた群れ
倒れたのは、寺の納骨堂のそばに立っていた古い大木だった。長い年月で幹の内部が傷んでいたところへ、急に強い風が吹きつけたことで、木はあっという間に倒れたという。高い枝にびっしりとぶら下がっていたオオコウモリの多くは、逃げる間もなく巻き込まれた。
知らせを受けた職員や獣医、地元の救助ボランティアは、倒木を少しずつ切り分けながら、生き残った個体の救出を急いだ。羽を傷めた47匹は保護されたものの、757匹という数の前では、できることは限られていた。
寺とオオコウモリの近い距離
タイでは、寺の境内にそびえる大木をオオコウモリの群れがねぐらにする光景が各地で見られる。昼間は枝にぶら下がって眠り、夕方になると一斉に飛び立って餌を探しに行く。果実を食べて種を運び、花の受粉を助けるなど、自然のなかで欠かせない役割を担う生き物でもある。
人の暮らしと寺、そして野生動物が一つの場所に同居しているのがタイの寺の風景だが、その近さは、災害のときに群れごと失われる危うさと背中合わせでもある。
相次ぐ古木と群れの受難
ナコンナヨック県では先ごろ、別の寺が樹齢100年を超えるヤーンナーを伐採し、やはりオオコウモリが死んだことで住民の反発を招き、知事が事実関係の調査を指示する騒ぎも起きていた。今回のような自然の倒木にせよ、人の手による伐採にせよ、長く同じ木で暮らしてきた群れが一度に追い詰められる構図は変わらない。
寺の古木は、地域の歴史であると同時に、数百匹の野生動物のすみかでもある。今回の出来事は、その木が失われたとき何が起きるのかを、はっきりと示すものとなった。