タイ西部タク県の国境地帯で、隣国ミャンマー側の戦闘が激化し、3,000人を超える避難民が国境に向かって押し寄せた。タイ当局は6月2日、このうち約200人がタク県側に越境してきたと明らかにした。ミャンマーでは2021年の軍事クーデター以降、軍と少数民族武装勢力の衝突が各地で続いており、その余波がたびたびタイ国境に及んでいる。
タク県の国境地帯で何が起きているのか
避難民が押し寄せたのは、タク県のなかでもミャンマーと接するポップラ郡の周辺とされる。砲声や爆発音が続き、国境沿いの学校が休校に追い込まれるなど、住民の生活にも影響が出ている。越境してきた人々は、寺院などに設けられた一時的な安全区域に身を寄せているという。
ミャンマー側からの戦闘の余波は、避難民の流入だけにとどまらない。過去の衝突では、迫撃砲弾がタイ側に着弾して民家が損壊する被害も起きており、国境に近い集落は常に巻き込まれる危険と隣り合わせにある。
カレン民族解放軍とミャンマー軍の戦闘
今回の戦闘は、カレン民族解放軍(KNLA)が6月2日、ミャンマー軍の拠点に対して攻勢をかけたことで激化した。報道によれば、KNLA側はドローンやロケット弾、機関銃などを投入して軍の拠点を攻撃したという。
ミャンマーでは2021年に軍がクーデターで実権を握って以降、各地で軍と抵抗勢力の戦闘が続いている。カレン州のほかにも複数の国境地帯で衝突が起き、国内避難民は数百万人規模に達するとされる。タイは地理的に、この混乱の最前線に位置している。
カレン州はミャンマー有数の少数民族勢力の拠点であり、軍政との戦闘が繰り返されてきた地域である。2026年5月にも、国境の町をめぐる攻防で約4,000人が避難を強いられたばかりで、情勢は一進一退が続いている。
タイ側の対応と国境地帯のリスク
タイ軍は国境警備の任務部隊を展開し、越境してきた避難民への人道支援を行うとともに、不法な越境を防ぐためのパトロールを強化している。タイ政府はこれまでも、戦闘が起きるたびに一時的に避難民を受け入れ、情勢が落ち着けば帰還を促す対応を取ってきた。
タイとミャンマーは長い国境線を接し、タイ側は数十年にわたってミャンマーからの避難民を受け入れてきた歴史がある。国境沿いには正式な避難民キャンプが複数設けられ、今も多くの人々が暮らす。クーデター後は戦闘の規模が大きくなり、新たに国境を越える人の数も増えている。
タク県のメソトはミャンマーとの主要な国境貿易の拠点であり、経済特区も設けられている。国境の不安定化は、人道上の問題であると同時に、貿易や物流にも影を落としかねない。タイにとってミャンマー情勢は、対岸の火事では済まされない隣国の課題であり続けている。