マレーシアがタイ産エビ5品種の輸入を停止した問題で、タイのアヌティン首相が商業省と農業協同組合省に対し、マレーシア側との早急な交渉を指示した。政府報道官が6月2日に明らかにした。輸出停止で打撃を受ける養殖農家に向けて、影響を和らげる対策の準備も同時に進めるという。 (関連記事:マレーシアがタイ産エビ5品種を輸入停止)
首相が指示した交渉と支援策
政府報道官によると、首相は商業省と農業協同組合省に対し、マレーシアの食品輸入規制をめぐる協議を急ぐよう求めた。あわせて、輸出が止まることで損失を被る養殖業者への支援策も準備するよう指示したという。タイのエビ養殖農家からは、政府による早期の介入を求める声が上がっていた。
マレーシアが禁輸に踏み切った理由
マレーシアの農業・食料安全保障省は6月1日から、タイ産のエビ5品種の輸入を一時停止し、シーバス(スズキ類)についても分析証明書の提出を義務づけた。対象となったのは、ブラックタイガー、バナメイエビ、バナナエビ、ブルーシュリンプなどの5種である。
マレーシア側は、今回の措置を病気の発生によるものではなく、食品の安全基準を強化するためと説明している。さらに、タイがかつてマレーシア産エビの輸入に同様の条件を課したことへの相互的な対応でもあるとしている。輸入停止は、タイの当局が食品安全基準に関する質問書に完全に回答した後、改めて見直される見通しである。
両国はもともと、互いのエビや水産物の輸入にあたって検査や証明書を求め合う関係にあり、今回のマレーシアの措置も、その延長線上にある報復的な色合いを帯びている。食品の安全という建前の裏で、双方が市場へのアクセスをめぐって駆け引きを続けている構図がうかがえる。
マレーシア向けはエビ輸出の5%
タイは年間平均でおよそ6,000〜8,000トンのエビをマレーシアに輸出しており、これはタイのエビ輸出全体の約5%にあたる。割合としては大きくないものの、特定の市場が突然閉ざされれば、その分の在庫や価格に影響が及ぶ。
タイはかつて世界最大のエビ輸出国として知られたが、2012年ごろに広がった早期死亡症候群(EMS)と呼ばれる病気で生産が大きく落ち込み、その後もエクアドルやインドとの競争にさらされてきた。それでも養殖業は地方の雇用を支える基幹産業であり、輸出先の確保は農家にとって死活問題に直結する。
今回の問題は、食品安全をめぐる手続きの不一致が、隣国同士の貿易摩擦に発展しうることを示している。両国がどのような着地点を見いだすかが、今後の焦点となる。