三菱自動車のタイ法人は7月1日、小型セダン「アトラージュ」の2026年モデル(MY2026)を発表した。タイ国内で生産される同モデルの公式価格は、1.2 ACTIVEが56万4000バーツ(約275万円)、上位の1.2 SMARTが61万9000バーツ(約301万円)。エンジンを改良して燃費を高めたのが今回の目玉で、競争の激しいタイの低価格セダン市場でのてこ入れを狙う。
MY2026で何が変わったのか
最大の変更点はエンジンだ。1.2リッターのガソリンエンジンにローラーカムシャフトを採用し、内部の摩擦を減らすことで燃費を改善した。派手なフルモデルチェンジではなく、日常的な使い勝手と維持費に直結する部分を地道に磨いた格好だ。アトラージュはもともと燃費の良さと価格の安さを売りにする「エコカー」で、この改良はその強みをさらに伸ばす狙いがある。搭載エンジンは1.2リッター(1193cc)の3気筒で、最高出力77馬力、最大トルク100Nm、変速機はCVTを組み合わせる。燃費性能はエコカー減税の要件とも関わるため、わずかな改善でも価格競争力に効いてくる。近年のタイ市場はEVや小型SUVへ人気が移りつつあるが、価格を抑えたガソリンセダンにも底堅い需要が残っている。
手厚い保証を標準で用意
価格には手厚い保証が付く。車両保証は5年または走行10万kmまでで、同じ期間の定期点検の工賃も無料。さらに1年分の車両保険(タイの1類保険)も含まれる。購入後の維持費が読みやすい構成で、初めて新車を買う層や、できるだけ費用を抑えたい層に訴える内容だ。タイでは車両価格そのものだけでなく、保証や点検、保険を含めた「乗り出しやすさ」が販売を左右するため、こうしたパッケージは実質的な競争力になる。タイ政府のエコカー政策の下で作られる小型車は、排気量や燃費、価格などの条件を満たすことで税制上の優遇を受けており、アトラージュもその枠組みに位置づけられる。
タイの低価格セダン市場での立ち位置
アトラージュが戦うのは、タイで人気の高いBセグメントの小型セダン市場だ。競合にはトヨタ・ヤリスエイティブ、ホンダ・シティ、日産・アルメーラ、マツダ2セダン、MG5などがひしめく。価格帯を見ると、ヤリスエイティブが56万9000〜72万9000バーツ、ホンダ・シティが59万9000〜79万9000バーツ、日産・アルメーラが54万9000〜69万9000バーツで、アトラージュは各社のなかでも入門価格の安さで存在感を出している。タイではセダンよりもピックアップや小型SUVが売れ筋だが、街乗り中心のユーザーや法人需要では手頃なセダンへの一定のニーズが続く。装備や動力性能で上位モデルに見劣りする面はあるものの、価格と維持費を最優先する買い手にとっては有力な選択肢となる。
日本では見かけないタイ生産の実用車
アトラージュはタイで生産され、東南アジアなどの市場に向けて販売される小型セダンで、日本の街中ではほとんど見かけない。タイでは通勤の足や配車アプリの車両として広く使われており、実用一辺倒の割り切った性格が支持されている。日本の三菱のラインアップが軽自動車やSUVを中心に組み立てられているのとは対照的だ。アトラージュは長年、タイの新車販売でエントリーセダンの定番の一つとなってきた。今回のMY2026は大きな話題性こそないものの、価格を抑えながら燃費と保証を着実に強化しており、値ごろ感を重視するタイの消費者に向けた堅実な一手といえる。






