タイの海で、サンゴの大規模な白化が再び起きかねないと専門家が警告している。世界的な海面水温の上昇を受け、サンゴの熱ストレスを示す指標が最も深刻な「紫(パープル)」の水準に近づいているためだ。強い「スーパーエルニーニョ」の発生も予測されており、観光資源でもあるタイのサンゴ礁が、また大きな打撃を受ける恐れが出ている。
「紫」は最も深刻な警報レベル
警告したのは、カセサート大学水産学部のトン・タムロンナワサワット准教授だ。サンゴの白化は、海水温が高い状態が続くと、サンゴが共生する藻類を失って白くなり、やがて死んでしまう現象を指す。アメリカ海洋大気庁(NOAA)は、衛星で海面水温と蓄積した熱ストレスを監視し、警報を段階で示している。最も深刻なのが「レベル5」で、地図上では濃い紫色で表される。この段階になると、複数種のサンゴがほぼ全滅しかねないほどの熱ストレスがかかっているとされる。エルニーニョ現象が起きる年は海水温が上がりやすく、白化のリスクが高まる。今回はとくに強い「スーパーエルニーニョ」が見込まれており、その紫の水準が現実味を帯びてきたことが、警告の背景にある。
過去最大級の白化が世界で進行中
世界のサンゴは、近年かつてない規模で白化が進んでいる。NOAAなどの集計では、2023年1月から2025年9月までの間に、世界のサンゴ礁のおよそ84%が、白化を引き起こす熱ストレスにさらされた。少なくとも83の国や地域で大規模な白化が確認され、これは記録上最大の白化イベントとされる。2014年から2017年にかけての白化で世界の礁の約68%が被害を受けたのを上回る深刻さだ。タイの海もこの流れの中にあり、決して例外ではない。
2024年には海洋公園12カ所を閉鎖
タイでは2024年にも深刻な白化が起き、当局は保護のために国立海洋公園12カ所を一時閉鎖した。ダイビングやシュノーケリングの人気スポットも対象となり、観光にも影響が出た。サンゴ礁は魚のすみかとなり、海岸を波から守る役割も担う。プーケットやシミラン諸島、タオ島など、日本人にも人気の海のレジャーは、健全なサンゴ礁があってこそ成り立つ。タイ湾やアンダマン海のサンゴ礁は、ダイバーや観光客を引きつける貴重な資源であり、沿岸の地域経済を支える柱でもある。白化が繰り返されれば、観光だけでなく漁業や生態系にも長く影響が及ぶ。
エルニーニョ下でどう守るか
サンゴの白化そのものを人の手で止めるのは難しい。海水温が下がれば回復する場合もあるが、熱ストレスが長引けば死滅してしまう。専門家は、監視を強めて被害の大きい海域での活動を制限したり、傷んだサンゴの回復を助けたりする対策の必要性を訴えている。ただ、地球規模の海水温上昇が背景にある以上、根本的な解決には温暖化への対策が欠かせない。タイの海の鮮やかな色が保たれるかどうかは、この夏の海水温の推移に大きく左右されることになる。

