タイ政府が、長く導入を先送りしてきた外国人観光客向けの入国料を、2026年の第3四半期にも徴収し始める方針を示した。1人あたり300バーツを軸に検討されており、滞在中の保険が付く点が新たな目玉となる。一方で、出国時に1,000バーツを課す構想は棚上げされた。観光客にとっては、タイへの旅のコストに直接かかわる話だ。
2026年第3四半期に導入、軸は300バーツ
スラサック観光・スポーツ相によると、入国料の徴収は2026年7月から9月の第3四半期に始まる可能性がある。金額は1人300バーツ(約1,500円)を基本に検討されているが、最終的な額はなお調整中で、引き上げ幅は大きくはならないと説明されている。 この入国料はタイ語で「カー・イアップ・パンディン」、直訳すると「土地を踏む料金」と呼ばれる。構想自体は2019年に300バーツで持ち上がったが、コロナ禍や観光の落ち込み、徴収方法の詰めの甘さなどから、これまで何度も延期されてきた経緯がある。
目玉は滞在中の保険、出国料は棚上げ
今回あらためて前面に押し出されたのが、保険の付帯だ。当初の案では300バーツのうち70バーツ分が、入国した瞬間から適用される医療・傷害保険に充てられ、残りが観光インフラや安全対策の整備に回るとされてきた。政府は保険の手厚さを重視しており、保険料の上昇を理由に、料金が300バーツを上回る可能性にも言及している。個人で同等の保険に入るよりはるかに安く済む、というのが当局の説明だ。 一方、出国時に1,000バーツ(約4,900円)を課すという別の構想は棚上げされた。スラサック氏はこの案について、適切でないと判断されれば前に進めない、として事実上見送る考えを示している。
徴収は航空券に上乗せ、空路・陸路・海路が対象
気になる支払い方法だが、政府が想定しているのは航空券への上乗せだ。入国審査のカウンターで個別に集めるのではなく、航空会社がチケット代金と一緒に徴収する形が有力とされる。陸路や海路で入る旅行者については、国境の検問所などで集めることが検討されている。当初案では、空路・陸路・海路のすべての外国人到着者が対象とされていた。 タイを訪れる旅行者にとっては、航空券を買う段階で自動的に上乗せされるため、現地で別途支払う手間は少ない。とはいえ家族連れであれば人数分が積み重なるうえ、ビザ関連の費用を引き上げる動きもあり、タイ旅行の総コストはじわりと上がりつつある。
度重なる延期と「高くなるタイ」
入国料の構想は2019年に打ち出されて以降、実現の一歩手前で何度もつまずいてきた。新型コロナによる観光の崩壊で議論はいったん止まり、2025年にも導入時期が2026年へと先送りされた。観光客数の回復が思うように進まないなかで、徴収による反発を恐れる声が政府内にも根強かったためだ。 もうひとつの背景は、タイの観光収入をどう底上げするかという課題である。集めた資金は観光インフラや公共施設、安全対策の整備に充てられる想定で、事故やトラブルに遭った外国人観光客を保険でカバーする狙いもある。ただ、入国料に加えてビザ関連の手数料を引き上げる動きも取り沙汰されており、気軽に行ける安いタイというイメージは少しずつ変わりつつある。それでも近隣国と比べた割安感は依然として強く、300バーツ程度の上乗せが旅行先としての魅力を大きく損なうとは考えにくい。
入国料はこれまでも何度となく「導入間近」と報じられては流れてきただけに、今回も予定どおり第3四半期に始まるかは見通せない部分が残る。ただ、保険という分かりやすい見返りを前面に出してきたことで、これまでの「ただの値上げ」という反発をやわらげる狙いもうかがえる。実際の開始時期と最終的な金額は、今後の閣議の判断を待つことになる。
