タイ南部クラビ県のコ・ランタ島で、強い毒を持つカツオノエボシが砂浜に相次いで漂着し、国立公園が遊泳禁止に踏み切った。2026年6月10日、ムー・コ・ランタ国立公園のライフガードが浜辺の巡回中に確認したもので、危険を知らせる紫の旗と遊泳禁止を示す赤の旗を立て、海に入ることを全面的に禁じた。この生き物は死骸になっても毒が残り、乾いて打ち上げられた個体に触れただけでも刺されることがある。
カツオノエボシとは何か、なぜ死骸でも刺すのか
カツオノエボシは、青く透き通った浮き袋を海面に浮かべ、その下に長い触手を垂らす海の生き物である。クラゲの仲間と思われがちだが、実際には小さな個体が多数集まって一つの体を作る生物で、触手には毒を持つ刺胞がびっしりと並ぶ。
やっかいなのは、砂浜に打ち上げられて動かなくなった後も刺胞が機能し続ける点だ。乾いて死んだように見える個体でも、触れれば刺胞が反応して毒を注入する。子どもが珍しがって拾い上げたり、写真を撮ろうと棒でつついたりする行為が最も危険とされる。
刺されるとどうなるのか
触手に触れると、激しい灼熱感とともにミミズ腫れのような跡が残る。タイの当局は、やけど状の発疹や強い痛みに加え、重い場合には呼吸が苦しくなったり意識を失ったりする恐れがあると警告している。神経や心臓に作用するとされ、体質によってはアレルギー反応が強く出ることもある。
国立公園は、浜辺を歩くときも素足を避けて靴を履くよう呼びかけている。特に岩場や灯台の周辺は毒を持つ個体が多く見つかるとして、立ち入らないよう求めている。
刺されたときの応急処置
刺された場合の対処は、ふだんの海水浴で知られるクラゲ対策とは少し異なる点がある。まずは海から上がり、触手が皮膚に残っていても素手でこすり取ってはいけない。こすると残った刺胞が次々に発射され、かえって毒が広がってしまうためだ。
触手はピンセットや手袋を使って取り除き、患部は真水ではなく海水で洗い流すのがよいとされる。真水で洗うと浸透圧の変化で未発射の刺胞が反応してしまう。酢やアルコール、ビールをかけたり、砂でこすったりするのも避けたい。痛みや腫れが引かない、息苦しい、じんましんが出たといった症状があれば、ためらわず医療機関を受診し、重い場合は迷わず救急車を呼ぶ。
クラビ一帯に広がる警戒
カツオノエボシの漂着はコ・ランタだけにとどまらない。報道によると、クラビ県では6月5日にレームトーノットで最初の発見があり、その後、ムー・コ・ランタ国立公園と、ピピ諸島を擁する隣接の国立公園の二か所で確認された。国立公園・野生生物・植物保全局は海の安全対策を強化し、赤旗の掲示と遊泳禁止の措置をとっている。
海流と風の向きによっては、今後も別の浜に流れ着く可能性がある。乾季から雨季への変わり目にあたるこの時期、コ・ランタやピピ諸島は日本からの旅行者にも人気が高い。浜辺で見慣れない青い物体を見かけても、決して触れず、近くのライフガードや係員に知らせるのが最も安全だ。

