タイ商工会議所大学(UTCC)の経済・ビジネス予測センターは、FIFAワールドカップ2026の期間中にタイ国内で動く資金を、総額およそ686億バーツ(約3,340億円)と試算した。全国1,200人を対象に5月30日から6月3日にかけて実施した消費行動調査に基づくもので、開幕直前まで決着していない公式中継の有無が、その金額を大きく左右する最大の変数になると指摘している。
中継の有無で110億バーツの差
タイで公式の生中継が行われた場合の経済効果は、総額686億バーツに達する。内訳は、飲食やテレビ購入などの正規の経済活動がおよそ211億バーツ(約1,020億円)、サッカー賭博による経済圏外の支出が約476億バーツ(約2,310億円)である。
一方、もし中継が実現しなければ、総額は577億バーツ前後まで落ち込み、110億バーツ(約535億円)近くが消える計算になる。とくに正規の経済活動への打撃が大きく、経済圏内の消費はおよそ4割減る恐れがあるという。中継権の確保は単なる娯楽の問題ではなく、国内消費を動かすエンジンだというのがセンターの見方だ。タイの放映権は開幕直前まで交渉が難航しており、その行方が経済効果を直接揺らす形になっている。
サッカー賭博が476億バーツ、消費の主役に
数字を見て意外なのは、経済効果の大半を占めるのが正規の消費ではなく、サッカー賭博だという点だ。回答者の37.7%が賭けをする予定だと答え、知人に賭ける人がいるとした人は76.3%に上った。1試合あたりの平均賭け金は1,109バーツ(約5,400円)、大会期間を通じた1人あたりの平均は19,933バーツ(約9.7万円)に達する。
賭博による支出の総額は約476億バーツと、正規の経済活動の倍以上にあたる。72.1%がサッカー賭博は以前より手を出しやすくなったと感じており、オンラインを通じて誰でも簡単に参加できる実態が浮かぶ。
視聴は深夜から早朝、SNSがフリーTVに迫る
試合への関心は高く、48.5%が強い関心を示し、82.9%が何らかの形で観戦する予定だと答えた。ただ、北中米で開かれる今大会はタイ時間で深夜から早朝に試合が集中するため、全試合を生で見ると答えたのは10.1%にとどまる。68.4%は重要な試合だけを生で見て、ほかは後から見直すと回答した。
視聴手段の変化も鮮明だ。SNSを通じて見る人が32.6%と、フリーTVの32.8%に肉薄した。従来のテレビからデジタル配信へと、観戦のかたちが移りつつある。
家計債務への懸念と無料放送を望む声
賭博の広がりには警戒も強い。71.0%がワールドカップで家計の借金が増えるかもしれないと考え、63.0%は仕事の効率が落ちる可能性を挙げた。盛り上がりの裏で、家計や生産性への副作用を心配する声は小さくない。
一方で、84.7%の人が、誰もがフリーTVで無料で観戦できるよう政府が中継権の費用を支援することに賛成した。政府の景気刺激策による消費の後押しもあり、ワールドカップは年央のタイ経済を動かす大きなイベントになりそうだ。

