タイのテレコム・メディア大手ジャスミン・インターナショナル(JAS)が、2026年FIFAワールドカップのタイ国内向け放映権を確保したと報じられた。FIFAとの数か月に及ぶ交渉が決着した形で、6月11日の開幕まで残り2日という土壇場での合意となる。タイだけが放映権を確保できず、視聴できない「ブラックアウト」の恐れが指摘されていたが、ひとまず回避される見通しとなった(関連記事:W杯開幕3日前もタイの放映権未定、近隣国は確保済みでブラックアウトの恐れ)。
開幕2日前の土壇場で決着
今大会は出場国が48チームに拡大し、6月11日から7月19日まで米国・メキシコ・カナダの3か国で104試合が行われる。当初は通信大手トゥルー(True)も放映権の取得を検討していたが撤退し、JASが事実上の唯一の買い手として交渉を続けていた。
JASはタイ国内でイングランド・プレミアリーグの放映権を持つ企業で、サッカーファンには馴染みが深い。プレミアリーグに加え、サッカー欧州選手権(ユーロ)やバレーボールの世界大会の放映権もタイで握るなど、近年はスポーツ中継への投資を強めてきた。今回のワールドカップ獲得は、その路線の延長線上にある。
政府の無料放送計画はなぜ頓挫したか
もともとタイ政府は、国民が無料で視聴できるよう放映権を確保する方針を掲げ、広報局に交渉を委ねていた。しかしFIFAが全試合をまとめた一括パッケージしか販売しないという条件を崩さず、その提示額は約17億バーツ(約83億円)に上った。政府が用意した予算は13億バーツ(約64億円)で、この差を埋められなかった。
政府の対応はこの数か月、迷走が続いた。5月には閣議で13億バーツの放送権予算を承認し「無料視聴」をうたったものの、デジタル副相が「無料は保証できない」と首相の方針との食い違いを露呈する場面もあった。最終的に政府は、海外より高い価格や米国の時間帯による販促効果の薄さを理由に、自前での買い取りを断念していた。代わって前面に出たのが民間のJASで、隣国ベトナムが支払ったとされる約1,500万ドルに近い水準を目指してFIFAと粘り強く交渉し、合意にこぎ着けたとみられる。
無料か有料か、視聴者の最大の関心
ただし、視聴者にとって最も気がかりな点はまだ残っている。JASがこの放映権をどう配信するのか、つまり地上波などで無料開放するのか、それとも自社の有料サービス経由での視聴に限るのかが、現時点で公式に確認できていないことだ。政府が目指した「全国民が無料で観戦できる環境」が実現するかどうかは、今後のJASの発表を待つことになる。
近隣のラオスなどはすでに放映権を確保しており、タイは出遅れていた。開幕が目前に迫るなか、どのチャンネルやアプリで、いくらで観戦できるのか。サッカーファンの視線は、JASが示す配信方法と料金の発表に集まっている。