英航空大手ヴァージン・アトランティックが、ロンドンとプーケットを直接結ぶ初の定期便を就航させる。2026年10月18日に運航を始める季節便で、週3往復を予定する。これは6月にバンコクで開かれた国際会議で87の航空会社がタイ路線の新設や増便を求めて競い合った動きの一環で、タイ政府は冬の観光シーズンに向けて国際線の拡充を急いでいる。
ロンドンとプーケットを直接つなぐ初の路線
ヴァージン・アトランティックの新路線は、ロンドン・ヒースロー空港とプーケット国際空港を結ぶ。2026年10月18日に就航し、2026年から2027年にかけての冬ダイヤで週3便を運航する。 便のスケジュールも明らかになっている。ロンドン発のVS214便は水曜・金曜・日曜の正午にヒースローを出発し、翌朝7時10分にプーケットへ到着する。折り返しのVS215便は木曜・土曜・月曜の午前9時20分にプーケットを発ち、同日午後4時にヒースローへ戻る。機材はボーイング787-9型機で、座席数は258席。内訳はビジネスクラス31席、プレミアムエコノミー35席、エコノミー192席だ。 この路線はヒースローとプーケットを直行で結ぶ唯一の便であり、ヴァージン・アトランティックにとっても東南アジア唯一の就航地となる。同社にとっては久々のタイ復帰でもあり、プーケットの観光地としての底堅い人気を映している。
87社がタイ路線を争った国際会議
今回の就航は単独の話題にとどまらない。背景には、6月9日から11日にかけてバンコクで開かれた第158回IATAスロット会議(SC158)がある。世界の航空会社が発着枠を調整するこの会議には146社が参加し、そのうち87社がタイ民間航空局(CAAT)との個別協議を希望した。タイへの新規就航や増便を狙う各社が、限られた発着枠を奪い合った形だ。 会議はタイ空港会社(AOT)がホストを務めた。タイが国際的な航空ハブとしての地位を高めようとしていることの表れでもある。
プーケットを中心に広がる新路線網
冬ダイヤで承認された新路線を見ると、プーケットの存在感が際立つ。ヴァージンのヒースロー便に加え、ロンドン・ガトウィックやコペンハーゲンからの路線、さらにモルドバのキシナウとシャルジャ(UAE)を結ぶ経由便、フィリピン・セブからの便などがプーケットに乗り入れる。 リゾート島だけではない。北部のチェンマイには中国の杭州や上海からの路線が、首都圏のスワンナプーム空港にはヘルシンキとメルボルンを結ぶ経由便が設定された。新興のリヤド航空(サウジアラビア)やウクライナのスカイアップ、エアボルネオなども新たな発着枠を確保している。タイ全土に向けて、世界各地からの空の便が太くなる。
観光の立て直しを急ぐタイ
タイがこれだけ国際線の誘致に力を入れる背景には、観光の伸び悩みがある。2026年前半は外国人観光客の数が振るわず、政府は年末から年明けの繁忙期で巻き返しを図りたい考えだ。観光はタイ経済を支える柱のひとつで、航空便の数はそのまま訪れる旅行者の数に直結する。 プーケットはタイ有数のビーチリゾートで、欧州からの長距離客にも人気が高い。ロンドンからの直行便が通年ではなく冬季限定とはいえ、乗り継ぎなしで結ばれる意味は大きい。今後の利用状況次第では、増便や通年化に向けた議論につながる可能性もある。
乗り継ぎなしで約14時間、欧州客の取り込みに弾み
これまでロンドンからプーケットへ向かうには、バンコクや中東の都市で乗り継ぐのが一般的だった。直行便が就航すれば片道はおよそ14時間前後で結ばれ、乗り継ぎの待ち時間や荷物の積み替えの手間から解放される。長距離移動を嫌って二の足を踏んでいた層にも、プーケットはぐっと近い行き先になる。 タイ政府は2026年通年で3,300万人規模の外国人観光客を見込んでおり、なかでも滞在が長く消費額の大きい欧州の長距離客は特に重視されている。ロンドンからの直行便はその象徴的な一手だ。冬の繁忙期に欧州からの需要をどれだけ取り込めるかが、季節便を通年運航へ格上げできるかどうかの分かれ目になりそうだ。プーケット国際空港にとっても、欧州の主要ハブと直接つながる路線が増えることは、空港としての格の向上につながる。
ヴァージン・アトランティックのプーケット便はすでに予約受付が始まっており、パッケージツアーは2025年10月末から、航空券のみの販売も同年11月下旬から始まっている。就航は10月18日。冬のプーケットに、新たな空の玄関口が加わる。

