ドイツとポーランドの警察が共同で国際的な麻薬密輸網を摘発し、約1.2トンの大麻を押収した。闇市場での価値はおよそ4億5600万バーツ(約22億円)にのぼる。注目すべきは、その密輸ルートの出発点がタイだったことだ。大麻はレンガを積んだコンテナに隠され、ドイツのハンブルク港を経て、ポーランドへ運ばれようとしていた。
レンガのコンテナに隠された1.2トン
押収された大麻は約1.2トンで、ラテライト(紅土)のレンガを詰めたコンテナの中に隠されていた。一見すると、ごく普通の建材の貿易貨物にしか見えない。犯罪組織は、合法的な商取引を装い、国際的な物流網とサプライチェーンを悪用して、大量の麻薬をひそかに運んでいたとみられる。ドイツとポーランド両国の当局は、逮捕した8人のうち6人を、公判を待つ間も勾留している。捜査は今も続いており、組織の全体像や、ほかの関与者についても、今後さらに明らかになる見通しだ。
なぜ「タイ発」なのか
この事件で見過ごせないのが、密輸の起点がタイだったという点だ。背景には、タイの大麻政策の大きな揺れがある。タイは2022年6月、アジアで初めて大麻を麻薬指定から外し、事実上合法化した。合法化を機に、国内では大麻の栽培や流通が一気に広がった。だが同時に、余った大麻が海外へ密輸される問題も深刻になっていった。大麻がなお違法とされる国々にとって、タイは格好の「供給元」になってしまったのだ。
相次ぐ「タイ産大麻」の摘発
実際、タイ産とみられる大麻の摘発は、各地で相次いでいる。英国の国境警備隊は2024年後半、タイから郵送された15トン以上の大麻を、わずか3か月で摘発した。2025年2月には、バンコクのスワンナプーム空港で、出国する航空旅客から2トンを超える大麻が一度に押収された。英政府によれば、2024年10月から2025年3月までの間に、800人を超える密輸業者が逮捕され、9トン以上の大麻が押収されたという。
医療用限定へ、揺り戻すタイの政策
こうした事態を受け、タイ政府は方針を転換した。2025年6月、大麻を再び規制し、原則として医療用に限る方針を打ち出したのだ。現在は、タイの医師が発行する処方箋(Por Thor 33)がなければ、大麻を合法的に買うことはできない。旅行者が気軽に購入することも難しくなった。合法化からわずか3年での揺り戻しは、大麻をめぐるタイの試行錯誤の激しさを物語っている。今回の欧州での摘発は、その副作用が、いまも国境を越えて広がり続けていることを示している。
